TUBE チューブ 死の脱出

フランス 2020
監督、脚本 マチュー・テュリ

ふと目覚めたら薄暗い暗所に居て、そこからの脱出を強いられる羽目になった・・・ってな調子の、なんの新鮮味もないシチュエーション・スリラー。

多くの人がCUBE(1997)との相似性を指摘してますが、こんなの考えるまでもなくCUBEそのままやんけ!って話でね。

CUBEが発表されて以降、雨後の筍よろしく大量の類似作品が制作されてきましたが、本作もその流れを汲むものと考えていいでしょう。

いわゆるこの手のパズルゲーム的な脱出行を描いた作品って、もはやミニジャンル化してる気さえするんでね、ま、パクリだ猿真似だと騒ぐほどのこたあない。

制作側の志が低かっただけのことです。

もしくはファン気質な人間がそのままメガホン握っちゃったか、どっちか。

各アトラクションに制限時間を設ける、基本閉所ばかりで移動が著しく制限される等、この作品ならではの工夫は見受けられますが、既視感をぬぐえるほどではなくてですね。

実は脱出することが目的ではなかった!みたいな裏切りがあるわけでもないし。

それなりのスリルやドッキリは散りばめられてますけど、その場その場で解決してしまえば喉元を過ぎていくものばかりなんで、手のひらに汗を握るってほどでもない。

唯一よくわからなかったのがオープニングからエンディングまでがどういう形で繋がってるのか?ってことなんですけど、これは多分、オープニングの時点ですべてが終わってた、と解釈すべきなんでしょうね。

それでやっと謎のエンディングの意味がおぼろげながら見えてくる。

なんだこれ、投げっぱなしかよ!と最初に見た時は思ったんですけど、よくよく考えてみれば主人公の娘がうろうろしてる時点で色々とおかしかったわけで。

いや、ダクト状の迷路に閉じこめられてる段階ですでにおかしいのは確かなんですけど、娘は設定上、確実に非現実ですから、おかしいにしても位相が違うと思うんです。

誰かが「今作における迷路は煉獄である」と指摘してましたが、ああ、なるほどなあ、と思いました。

そう考えると全てがしっくりといく。

煉獄になぜ自立型治療機械が存在してる?エンディングの風景は地球じゃないんじゃないのか?等、疑問が残る部分もありますけど、おおむね解釈の方向性は間違ってないと思います。

どうせならCUBEもどきのスリラーであれこれ考えさせられるんじゃなくて、もっと野心的な作品で思索を巡らせたかった、とは思いますけどね。

ジャンル映画と考えるなら悪くはないと思いますが、すっきりしないという人もたくさんいそう。

最近はプラットフォーム(2019)みたいな、優秀な同傾向の作品も発表されてますんで、もうちょっと頑張ろう、と監督の背中を押してもいいかもしれませんね。

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