2020 韓国
監督、脚本 ユン・ウンギョン
そういえば韓国ホラーって初めて見るなあ、と今更気づいたり。
ナ・ホンジンの哭声/コクソン(2016)をホラーとするなら初めてではないんですけど、なぜかこれまで巡り合ってこなかったですね。
わざわざホラーに着目しなくても、面白くて熱量のすごい作品がいっぱいあるからなあ、韓国映画。
コロナ禍ゆえのチョイスか、と自分で思わなくもないんですけど、まあ、結論から言っちゃうなら悪くはないんだけど、あと一捻り、といったところ。
異父兄弟にあたる少女を、事の成り行きから預かる羽目になってしまったお姉さんの予期せぬ恐怖体験を描いた作品なんですが、やっぱりね、ホテルを舞台にしちゃうとどうしても私のような古い映画ファンはシャイニング(1980)を思い出したりしてしまうわけですよ。
「絶対に405号室には入ってはいけない」などと言われると、なおさら。
さすがに双子の少女やエレベーターから血の奔流があったりはしないんですけど、休業中のホテルでの出来事でお客は無人、預かった少女がホテル内を探索してたらその先になんか居た、みたいなシチュエーションを目の当たりにすると、どうしたって既視感を覚えてしまう。
しかも間に悪いことに数ヶ月前、ドクター・スリープ(2019)を見たばっかりだしなあ。
もう少し違う切り口でシナリオ展開できなかったものか、と。
舞台設定ゆえか、恐怖演出がどうしても似通ってきちゃうんですよね。
絶対背後になんか居るな、と思ったらちゃんと居るし、カメラ切り替わったら待ち受けてるはず、と思ったらやはり待ち受けてるし。
この手のホーンテッドハウス調なホラーで新しいものを見せること自体が至難の業、といえばそうなんですけど。
とりあえず私が一番「なんじゃそりゃ」と思ったのは、霊能少年らしきキャラが満を持して中盤で登場し、事態を別の方向へと導きそうになるも、核心に迫る前に早々と撤退してしまったこと。
しかも霊能少年、オチには全く関係してない、ときた。
単にお茶を濁してるだけなのに、それがあたかもミスリードを気取るように作劇されていて、あたしゃ腰砕けた。
そういうことじゃないだろう、と。
率直に言うなら、騙しのテクニックが見当違いに見苦しい。
ま、それでも一応ね、終盤のどんでん返しには「ほう、なるほど」と唸らされるものはありました。
このオチならもっと別のことに気を使うべきだろう、と思わなくもなかったんですけど、これはこれでアリだな、と。
不可視な恐怖を秘めたる狂気にすり替える手口は、ある意味で地に足がついてる、と思いましたし。
最後まで見て、ようやく従業員のやさぐれぶりが納得できる仕掛けになっていて。
振り返るなら、ありきたりな恐怖演出より、戸口に立った従業員の独白が一番怖かったな、と改めて納得したりも。
とりたてて突出したものはないんですけどね、韓国映画らしい力技は堪能できるのでは、と思いましたね。
惜しむらくは異父姉妹の関係性の変化を、作品へ上手に織り込む事ができなかったことでしょうか。
これで最後に二人の間で新たに芽生えた感情の変化とか、上手に演出できてたら視聴後の印象も変わってた、と思うんですけど、スルーしたまま終わっちゃったしなあ。
韓国映画らしさはそれなりに濃ゆいんですけど、もし世界に打って出たい、と思ってるのなら課題は残されてる、といった感じでしょうか。
さすがに韓国といえどパラサイト(2019)や新感染(2016)レベルの作品はそうそうない、ってことですね、うん。