アメリカ 2020
監督、脚本 ザ・ピアース・ブラザース
人から人へと乗り移る事のできる魔女ブラック・アニスと、対峙することを余儀なくされた少年を描く、青春ホラー。
とりあえずはブラック・アニスって、なんなんだ、という話であって。
イギリスに伝わる有名な悪い精霊らしいんですけど、いきなり魔女ありきでストーリーを進められても、はいそうですか、とは寄り添えないわけですよ。
しかもブラック・アニス、木の股から産まれてくるらしくて、どうやら大樹の地下茎を住処にしてるっぽい。
お前はモグラか!って。
さしずめ日本で言うなら地下だから、地獄とか黄泉比良坂とか、そのあたりの異談をベースにしてるってことなんでしょうけど、それも「背景たる世界観の構築」があってこそ、ですからね。
例えば単独でね、地獄の獄卒とか、奪衣婆とか、黄泉津大神(イザナミ)が登場して大暴れされてもですね、東映まんが祭りですか?それとも鬼太郎の劇場版?としか思えないわけで。
非現実であり、異形の根幹をなすものである魔女の存在性があまりにもチープで、安っぽい。
悪いことばっかりしてるとなまはげがやってくるぞ!と脅されて泣くのは子供だけですから。
大人の視聴者相手になまはげ怖いぞ!って迫られても、それを本気で言ってるお前のほうが怖いわ、と言う他なく。
まあ、のれない。
お話はわざわざ35年前から始まるんですけどね、そういうシナリオ構成で信憑性を勝ち取ろうとしてる段階でもう駄目。
昔から居たんだよ、ではなく、なぜ現在に存在するのかを掘り下げないと意味がない。
また、この物語、立ち上がりが異様に遅くてですね。
なんか変だな・・・だけで延々1時間近く引っぱるものだから。
大したネタじゃねえんだからさっさと展開しろ!とヤキモキすることは必須。
あと、監督はホラーにみせかけてどんでん返し系を狙ったようなんですが、私の感覚では「ひっくり返すのはそこじゃない」としか思えなかった。
こういうのって、ひっくり返したことで物語の意味合いが変わらなきゃいけない、と思うんですね。
あ、忘れてた!以上の意味を持たないんですよ、このどんでん返し。
ただ、あっ、と言わせたいだけかよ、って。
主人公少年の淡い恋とか、両親の不仲とか、脇道のドラマ作りに躍起になってる暇があったらもう少し怖がらせてくれよ、というのが本音ですかね。
もしくは逆に怪奇味を控えめにして、青春ドラマに本腰をいれるとかね。
魔女の意味不明な行動が目立つシナリオも含めてまだまだ未熟、といったところでしょうか。
しかし、なんでサム・ライミはこの映画を絶賛したんだろうなあ。
これもコロナ禍の供給不足ゆえ、なのか?
うーん、私は評価できないですね。