モンスターハンター

アメリカ 2020
監督、脚本 ポール・W・S・アンダーソン

世界的に大ヒットしたカプコンのゲームを映画化した作品。

さて私はモンスターハンターというゲーム自体を全く知らないし、プレイしたこともないんですけど、自信をもってひとつだけ言えるのは「この手の映画に傑作は存在しない」ということ。

これまであまたのビデオゲーム映画化作品を見てきましたが、ほぼ99%の確率で面白いと思ったものはなかったですね。

それは本作の監督であるポール・W・S・アンダーソンが手掛けたバイオハザードシリーズも同様。

唯一の例外がサイレントヒル(2006)か、と思うんですが、これはほぼオリジナルといっていいシナリオの改変、脚色がありましたしね。

あんなのはクリストフ・ガンズみたいな超オタクの監督にしか撮れない。

なのでこの映画にも全く期待はしてなかったし、そもそも見るつもりもなかったんですが、ある日、偶然にも店先で「あること」に気づいてしまいまして。

主演のミラ・ジョヴォヴィッチに今更期待することはなにもないんですが、その右側にトニー・ジャーと記されてるじゃねえかよ、と。

ええっ、トニー・ジャー?

アクション映画好きはみんな知ってると思うんですが、タイ出身の世界的アクションスターで、ムエタイの動きをベースに香港カンフー映画でも大活躍してる人物。

トニー・ジャーがモンスターハンター?

巨大なモンスター相手に肘打ちを決めたり、ハイキックが炸裂したりするわけ?

俄然上昇する期待値。

まさかとは思うがこの映画って、スカイラインー奪還ー(2017)みたいに異生物と人間の肉弾バトルを真面目に撮ってたりするわけ?と。

多分そんなことはないと思う、ないと思うんだが、もしや・・・ということもある。

でなきゃわざわざトニー・ジャーをキャスティングする意味がない。

んで、だ。

・・・・あれこれ悩んだ結果、手にとってしまったんだよ、諸君。

そしたらさー、やっぱりスカイランー奪還ーみたいな暴挙というか滅茶苦茶はやらかしてなくてさー。

そりゃそうだよな、この手の大作映画でポール・W・S・アンダーソンのような安牌な監督がそんな冒険するはずもない。

なんのためのトニー・ジャーなんだよ!と少し憤ったりもしたんですけどね、見進めていくうちに、おや、これはこれで悪くはないかも・・・と思えてきたりもしたんで、あら不思議。

さすがは似たような映画ばっかり撮ってる監督なだけはあるな、と感心したり。

うまかったのはモンスターの跋扈する世界を「異世界」と位置づけたことでしょうね。

日本じゃ大流行の異世界ものですが、この手の映画でゲームの世界観を「現実ではない」としたことは、ゲームに興味のない人間に対する門戸を広げる効果があったように思うんですね。

言語の通じない異世界の住人ハンター(トニー・ジャー)と現実世界の軍人アルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)の接近遭遇(異文化交流?)にじっくりと尺を割いたのも正解。

非現実感に説得力をもたせようと努力してるのがよくわかります。

ハンターとアルテミス、お互いの不信が和解へと至るプロセスに「食い物」を用いたことも、わかってるなあ、と思いましたし(これは私の経験則もあって)。

細かいカット割りで矢継ぎ早に場面を展開していったのもうまいと思う。

あんまりデティールや異世界のバックグラウンドにはこだわってないんですけどね、それを感じさせないスピード感、テンポの良さがある。

取捨選択が上手なんですよね、限られた時間で何を見せて、何を省くかの。

エンディングなんて、おお、ネバーエンディングストーリー(1984)のようだ、と思いましたし。

終わってみれば、予想外に良質な異世界ファンタジーだったじゃねえかよ、みたいな。

そりゃね、ゲームをやってる人にとってはあれこれ不備も目につくんでしょうし、若い人はもっとバトルで多様な見せ場が欲しかったとか、色々あるんでしょうけど、私はタイアップ映画にしちゃあ上出来、と思いましたね。

決して傑作というわけではないと思うんですが、素材を料理する手際はプロだったと感じました。

のんびり菓子でもつまみながら見る分には問題なしの良作じゃないでしょうか。

1730万本を売り上げた、シリーズ最高傑作との評価が高い2018年作。
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