1985年初出 小池一夫/木村えいじ
小学館ビッグコミックス 全12巻

目的もなく自堕落に日々を過ごしていた不良少女が、女子プロの世界で生き抜こう決心し、果敢に挑戦する姿を描いた成長物語。
しかしまあ、思ってた以上に小池一夫はゴルフ漫画を描いてたんだなあ、と。
上がってナンボシリーズだけかと思ってたら、少し掘っただけで出てくるわ出てくるわ。
私はほぼゴルフに興味がないんで、小池一夫でなければ多分読んでなかっただろうな、とは思うんですけど、たとえ小池一夫でも食指のそそられないジャンル漫画はやっぱりあんまり楽しめないな、と今回つくづく思った次第。
最近、小池ゴルフ漫画ばっかり続けて読んでるからなあ。
まとめ買いしたのが失敗だった。
電子書籍がどうなってるのかはわからないんですけど、紙の本に関しては、小池原作のゴルフ漫画って全部安いんですよね。
このシリーズなんて12冊で500円でしたし。
そりゃあんまり興味なくても買うだろ、って。
子連れ狼とか、あの辺りは相変わらず高いんですけどね、なんだろ、ニーズがないのかな?ゴルフファンの。
現在のプロゴルファーの世界は、80年代当時とは大きく変わってるのかもしれませんね。
全く知らないんで、勝手な当て推量ですけど。
で、肝心の内容なんですが、大きくはスポーツ漫画の枠組みにありながら、一風変わってるのは、そこに小池一夫お得意の「揺るがぬ純愛」を持ち込んだ点にあるといっていいでしょう。
主人公ヒロがゴルフを志すきっかけとなった人物がいるんですけどね(ゴルフの師でもある)、この人が序盤で早々と病死しちゃうんですよ。
ヒロは師の思い出を胸に、くじけそうになる心を奮い立たせながらゴルフに邁進していく、という筋立て。
なんかどこかで似たような作劇にお目にかかったような・・・と思ったあなた、大正解です。
小池一夫が現代劇で延々やってた「自分のために死んだ女の想いを胸に、目的を遂げるべく突き進むマッチョな主人公の道行きをドラマチックに描く」という作者定番の構図を男女逆転させただけの話でして。
ゴルフというスポーツとの取り合わせや、主人公が女性であることがこれまでとは違う質感を有してはいますが、やってることはおなじみ金太郎飴。
物語の展開にある程度の予測がついてしまう。
小池一夫のヘヴィリーダーならなおさら(私のことだ)。
また、よろしくないのが師とヒロの間に通う感情が、死を前提として愛にすり替わっているような節がありまして。
敬愛の情だったはずなのに、それがいつの間に熱烈な相思相愛へ?って感じなんですよね。
小池一夫にしてはちょっと演出が雑だったかな、と思わなくもありません。
けなげでひたむきな主人公の生き様に読み応えがないわけではないんですけどね、私の場合、二人の離別までの流れでつまずいてしまったものだから、どうしてものれない部分があって。
終盤の「女子プロのチームを作る」というストーリー進行で若干盛り返しはするんですが、何故かその後、突然すべてをご破算にしてまたヒロが一人に戻る筋運びにしたのも失敗だった、と思います。
小池劇画じゃよくある話ですが、風呂敷を広げまくった挙げ句、突然集中力が失せたようにテンションダウンする悪い癖がこの作品でも顕著。
エンディングなんてそれなりにまとめただけ、と言われても否定できない、と思いますね。
木村えいじのシャープな線が今見ても古びてなくてスタイリッシュな作画だなあ、と感心したりもするんですけど、残念ながら凡庸かと。
ショートカットの似合うヒロのキャラクター像はニューウェーブにも通底する可愛さかと思うんですが、ゴルフ門外漢な私にとってそれ以上の何かは見出しにくい一作。