ノンストップ

韓国 2020
監督 イ・チョルハ
脚本 シン・ヒョンソン

旅客機ハイジャック犯と、かつて北朝鮮最強と呼ばれた女スパイの戦いを描いたアクション・コメディ。

今どきハイジャックなどというリスクの高い立てこもり犯罪を本気でやろうとするテロリストが存在するのか?つーか、韓国の空港警備はどうなってる?という疑問はさておき。

主人公が脱北者である最強スパイ、という設定はなかなか面白かった、と思いますね。

これがアメリカなら元CIAとか元特殊部隊になるんだろうけど、朝鮮半島が舞台だと北のスペシャリストになるのかー、と。

ま、やってることは一連のリーアム・ニーソン主演作とほぼ同じで、特にフライト・ゲーム(2014)と大きくかぶってるなあ、と思わなくもないんですが、この作品が上手だったのは「まさかこの人物が・・」と思われるような女性を元スパイに仕立て上げたこと。

DVDのジャケットでネタバレしてるような気もしなくはないはないんですけど、私は予備知識なしで見たものだから、そのギャップに腰抜かしましたね。

いやいやあんた微塵もそんな気配見せてなかったじゃん!みたいな。

そういう意味では秀作SPY(2015)に近いかもしれない。

SPYはどこからどうみても愚鈍そうな重量級女子が「最強の格闘術の使い手」だった点が強烈な落差として機能してたわけですけど。

そりゃね、バカ笑いしてしまいますって。

ついさっきまでヌカミソ臭いことしか言ってなかった女が、屈強な男どもをちぎっては投げ、ちぎっては投げで平伏させていくんですから。

そのカタルシスたるや半端じゃない。

編集と早回し、CGに頼ったSPYとは違って、きちんと生身のアクションを狭い航空機内で演じてるのもいい。

これが驚くほど本格的なんですよ。

香港カンフー映画さながら、というのはちょっと褒め過ぎか。

スタントが存在してるのかどうかはわからないんですけど、韓国映画でこれだけのレベルの組み手をみせつけてくれたら上出来だと思いますね。

徹底して笑いを忘れない姿勢も好感触。

どんなに緊迫した場面でもしっかりボケてくる貪欲さは望むところ。

ドリフっぽかったりはするんですけどね、ハリウッドコメディのつまんねえジョークや下ネタに比べたら上等ですよ。

惜しむらくは、ホームドラマ(人情ドラマ?)風の展開に突き進んでしまったせいで決着がうやむやになってしまったこと、どんでん返しにこだわったせいなのか、それともコメディであることに固執しすぎたのか、なんとなく安っぽい仕上がりになってしまったこと、でしょうね。

クライマックスをシリアスでドラマチックなシーンにすることもできた、と思うんですよ。

せっかくの緩急、落差が一番盛り上がらなきゃなんない場面で消沈気味だった印象は否めない。

どことなくテレビドラマ風だったなあ、と思わせちゃあ駄目だ、と思うんですね。

見終わってから、つい「もったいない・・」とつぶやきの漏れる一作。

とりあえず登場人物は全員がキャラクター作り込まれてるんで、それだけで楽しめることは確かなんですけど、ここまでやれるんなら監督にはさらなる高みを目指してほしい、と願う次第。

あと少し、ですかね。

タイトルとURLをコピーしました