2021 イタリア/ベルギー
監督 ガブリエーレ・マイネッティ
脚本 二コラ・グアッリャノーネ、ガブリエーレ・マイネッティ
人とは違う能力を隠す(活かす?)ために、サーカス団に属して芸を売る4人組へ迫る、戦禍の足音を描いたアクションファンタジー。
いわゆる日本でも昭和半ばぐらいまであった見世物小屋等で、異形を売り物にしていた連中が、実は本物の能力者だったら・・をアイディアの核にしてみた作品、といっていいかもしれません。
とはいえエレファント・マンみたいに、見るからに異形な存在は居ないんですけどね。
あんまり黒めにグロくしすぎるとしんどくなっちゃうだろうから、くすっと笑えるぐらいの、ちょい明るめのテイストで、ってところか。
作品の時代背景がそもそも重苦しいわけですしね、そこに埒外な弱者の悲劇を真面目に盛り込んだ日にゃあ息苦しくて見てられん、って話でしょうし。
一応群像劇風ではあるんですが、どっちかというと主人公は電撃使いの少女。
少女がナチスのせいで仲間と離れ離れになり、孤立無援で団長を救い出そうとする道行きをじっくりと追っていく感じ。
おかしなレジスタンスが登場してきたり、ナチスのサーカス団の団長が屈折しまくってたり、少女の非暴力に深い理由があったりと、キャラもドラマもなかなかに濃厚でしっかりしてます。
ま、私はこの手の異形の悲哀を盛り込んだ物語に弱いんで。
ついつい前のめりになってしまうというのはあるんですが、この作品が皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(2015)の監督作であるという点も期待値を爆上げする要因になってたりはします。
前作でのアレッシアの振る舞いには不覚にも泣かされたからなあ。
ガブリエーレ監督の弱者への眼差しは、おかしなフィルターやバイアスかかってない分、ひどく痛々しかったりもするんで油断がならない。
ああ、どうかこれ以上主人公の少女が不幸になりませんように、とびくびくしながら見てたんですけど、終盤の大立ち回りへと物語が進むに至って、ありゃっ、鋼鉄ジーグとはちょっと違うかも、と認識を新たにする。
いやこれ、炎の少女チャーリー(1984)やん!って。
キャリー(1976)でもいいけど。
見事にイヤボーンの法則(知らない人はググってくれたまえ)を、そのまま体現しとるがな、と。
すいません、盛大にネタバレしてるかもしれません。
うーん、どうなんだろうなあ、こういうことをやっちゃうと急にリアリティが霧散しちゃう気がするのは、私がじじいだからでしょうかね?
ダビッド・ディ・ドナテッロ賞(イタリアのアカデミー賞)を6部門も受賞したヒット作ですし、最後の最後でイヤボーンだったがゆえに強烈なカタルシスを得られたのでは?と言えるのかもしれませんが、私はもう少ししっとりしてた方が好みかな。
だってもうクライマックスは戦争映画みたいになっちゃってますもん。
誰だ、巨神兵連れてきたのは!?のレベルでスペクタクルですから。
出来ないことがあまりにも多いけど、なんとか機知と機転で窮地をくぐり抜けてナチスの裏をかきました、みたいな筋書きだったら多分大絶賛してたと思うんですけどね、絵的に派手にしたい気持ちもわかるんで、まあ、これはこれで正解なのかな、と思ったりはします。
個人的には前作のほうが好みですけどね。
主役を演じたアウロラ・ジョビナッツォがエキゾチックなアラブ美人だったのでよしとするか。