ティル・デス

2021 アメリカ
監督 S・K・デール
脚本 ジェイソン・カービー

ポスターに書かれた文言そのままなんですけど、目覚めたら死体となった夫と手錠で繋がれており、なんとかしようと思う間もなく、突如襲撃者がやってきて命を狙われる羽目になるスリラー。

いやもう、どんだけ四面楚歌なんだよ、って話です。

死体と手錠で繋がれてるだけでもゾッとしない状況なわけですが、主人公が居るのは雪に閉ざされた山荘で(自宅じゃない)電話は通じない、車のガソリンは抜かれてる(前日に小細工されてる)役に立ちそうなものは何もない、飯食うのも便所へ行くのも一苦労なのに、そこに屈強な男どもが襲いかかってくるってんだから物語上の縛りの設定があまりに容赦なさすぎじゃねえかよ、って。

車椅子の少女が母親から逃げるために知略の限りを尽くすRUN/ラン(2020)という作品がありましたが、絶望的なシチュエーションに限って言うなら、結構近いものがあるな、と思いましたね。

どうすればなんとかなるのか、全く想像できないですから。

かほどに無理ゲー。

よくぞまあ、ここまで徹底的に主人公を追い込むな、と。

これ、ちゃんと終われるのか?と首をかしげたくなるほどに隙が見つからない。

で、もちろん物語最大の醍醐味は、どうやって危地を脱するか?にあるわけですが、さらに肝心なのはなぜそんな状況に追い込まれたのか?という点であって。

これがあやふやだったり投げっぱなしだったりすると凡百の類似作(CUBEの二番煎じみたいな作品群とか、あの手のやつ)に埋もれてしまうぞ、と懸念してたんですけど、そこは意外にもきっちりと納得のオチを用意してて素直に感心。

そこまでするやつがいるか?という疑念はさておき。

いや、インディペンデント系映画にしちゃあ上出来のシナリオだと思います。

そりゃ、ご都合主義的な展開がないわけじゃないんですけど、しらけるほどじゃなかったですし、いちいち目くじらたてるより、一緒に盛り上がったほうが今回みたいな場合はきっと得だと思うんですよ。

布石の打ち方(いろんな小道具があとから意味を持ってくる)や、ドレスで死体を引きずる絵面等、センスが感じられたことも評価していいんじゃないかと。

ただね、私が唯一気になったのが主演女優のミーガン・フォックスでして。

この人の出演作品は過去に一本も見たことがないので断言はできないんですが、なんか役柄に合ってねえな、というか微妙に大根というか。

ふと気を許すと素のミーガンが演技の合間に顔をのぞかせているように思えて。

熱量高い演技してるときは大丈夫なんですけど、セリフ無しで表情だけの演技となると、急に「今、一瞬宇宙と交信してなかったか?」と問いただしたくなるような顔をする時がある。

そうなってくると服についた返り血も鼻血の跡も全部血糊に見えてくるんですよね。

ありていにいうなら、この人のせいで冷める。

おきれいなのは結構なんですけどね、おきれいなまま崩さないんですよね、この人、たとえ見かけは汚れてても。

演技指導がちゃんとしてなかった、ってことなのかもしれませんけど。

思わぬ拾い物だった、と言いたいところなんですが、主演女優が違う人ならもっとすごいことになっていたのでは・・・と思えるあたりが難点かと。

新人監督の長編デビュー作として考えるなら、賞賛されてしかるべきなのかもしれませんが。

あと余談ですが、手錠で繋がれた死体役の男性、今回相当大変だったろうなあ、と思います。

扱いがもう・・・見ればわかります。

まさかCGじゃないよね?これ?

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