皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

イタリア 2015
監督 ガブリエーレ・マイネッティ
脚本 ニコラ・グアリャノーネ、メノッティ

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

イタリア発の超人ヒーローもの。

永井豪が原作を務め、70年代に日本で放映されたロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」の名がタイトルに冠されていますが、内容に直接的な関係はありません。

どうやら鋼鉄ジーグ、イタリアでも放映されて人気を博したようで、今作の場合、ジーグの存在自体が「アイコン」として使われている、というのが正解。

主人公がジーグに変身してしまうわけではないのでご安心を。

とはいえ、もはや鋼鉄ジーグをリアルタイムで知ってる人は結構な年配の方ばかりだと思うので、殆どの人はなんのことかよくわからないんじゃないか、と思われますが。

ま、わからなくとも問題はないです。

大枠でのストーリーはどちらかと言えばアメコミヒーローものに近いです。

孤独でやさぐれたチンピラが、謎の液体を浴びてしまったことで超人的な力と不死身の肉体を持つ人間に变化してしまい、使うべき力の方向性に迷う、というのがおおよそのあらすじ。

この作品が独特だったのは、そこに、母を失い、少し頭のネジが緩んでしまった女アレッシアを重要なサブキャラとして登場させたことでしょうね。

アレッシア、鋼鉄ジーグの世界観と現実を混同しちゃってるんです。

主人公の力を秘密を偶然知った彼女は、彼のことを鋼鉄ジーグに変身するヒーロー司馬 宙だと思い込む。

「あなたの力は悪を倒すためにあるのよ」とアレッシアは熱弁するんですが、主人公は根がクズなんで、そんな頭のおかしな女の戯言に耳を貸すはずもない。

ところが事態の成り行き上、アレッシアを匿う羽目になった主人公は徐々に彼女に気を許していき、いずれその言葉に耳を貸すようになるんですが、もうね、この段階で私は物語がどう転ぶのか100%の確率でもって予測ができた。

で、その予測は的中するわけですが、わかっちゃいたけど思わず嗚咽が漏れてしまった、ってのはまさにこのことで。

やっぱりそうくるのかよ、でも心揺さぶられちまったよ畜生!不覚!ってなものです。

後半の展開は怒涛。

かっこよすぎて鳥肌モノのセリフを吐いたかと思えば、主人公は己が身の危険も承知で素顔のまま死地へと乗り込んでいく。

いやもう、王道なんですよ。

やりつくされたパターンなのは間違いないんです。

でも、アレッシアの存在が、アメコミの粗悪な模倣と吐いて捨てることを許さない。

何も持たず、何も信じてこなかった男の再生の物語であり、ヒーローをヒーローとしての規格にあてはめることなく立脚させた秀作だと思います。

ラストシーンがまたブサイクで泣ける。

鋼鉄ジーグのタイトルに惑わされず見てほしい一作ですね。

予想外の収穫、ありきたりに堕さぬアレンジの巧みさに脱帽、といったところでしょうか。

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