ザ・フラッシュ

2023 アメリカ
監督 アンディ・ムスキエティ
脚本 クリスティーナ・ホドソン

DCコミック原作のヒーロー、フラッシュの単独主演映画。

フラッシュの単独での映画化は今回が初らしいんですが、あれ?昔なかったか?フラッシュ?と調べてみたら、こういう画像が出てきまして。

そうそう、これこれ、もう内容忘れたけど見た記憶があるぞ、なんなんだ?なかったことになってるのか?とさらに掘ってみたら、どうやらこちら、1990年にTVシリーズをまとめたものらしくて。

スクリーン用じゃなかったのね。

チープな印象が強かったことに納得。

当時、サイボーグ009の島村ジョー(高速移動の特殊能力を持つ、と言う意味ではフラッシュが先なんだろうけど)のほうがよっぽどかっこいいじゃん、と思ったもんなあ。

1990年当時に比べたら見違えるように垢抜けたものだ、フラッシュ。

当たり前か。

とはいえ今作、フラッシュの単独映画というよりはジャスティス・リーグ(2017)の世界観でフラッシュをメインに描いてみました、って感じで。

なんせ舞台はゴッサム・シティだ。

バットマンじゃねえかよ。

ほんとどこにでも顔を出すというか、アメリカ人はバットマン好きだよなあ、と思うんだけどDCエクステンデッド・ユニバースの忘れ形見というか、消化プログラムだと考えると色々感慨深かったり。

ここから起死回生を狙ってたんでしょうね。

しかしながら現実は、目も覆いたくなる有様で大惨敗だったわけですが。

ま、みんな言ってますけどね、正直、そこまでヒドイ内容ではないです。

というか、むしろここ最近のDC映画の中じゃあ、出色の出来だったと思う。

これをだめだと断じてしまうのは、監督のアンディ・ムスキエティがあまりに気の毒。

だって普通に水準以上の力量を見せつけてますしね。

序盤のフラッシュが高速移動する際の映像表現及び、ビル倒壊現場で大活躍する一連のシークエンスがまずは圧巻でしたし。

合間合間にバットマンがバットポッドで駆け抜けていくのもスリル満点。

そこからフラッシュ個人の家族ドラマへとシフトしていくシナリオ展開も地に足がついてて悪くない。

ヒーローだからといって何でもできるわけじゃない、としたストーリーテリングはDCコミック超人大集合祭りみたいな状態になることをきっちり阻止してましたしね。

光速を超えて走ることが時間に影響を及ぼすとした相対性理論的なSF的講釈(ちょっと疑似科学っぽい都合の良さはあるが)も知的好奇心をくすぐられて良い。

光速を超えた空間にいた男の正体とか、そうきたか、って感じでしたし。

キャストも豊富でしたしね、あの人のバットマンとか、スーパーガールとか。

サッシャ・カジェ演じるスーパーガールがこれまたいいんですよ、セクシーで強くてね。

キャプテン・マーベルを演じたブリー・ラーソンよりはるかにかっこいいし、なんならワンダーウーマンを演じたガル・ガドットすらも食わんが勢い。

また、エンディングに待ち受けるスーパーマーケットでのシーンなんて、普通に感動的で涙腺やられそうになりますし。

いやいやいや面白いじゃないか、なにがだめなの?って感じ。

並行宇宙(マルチバース)の解釈が難解過ぎた、と言ってる方も居ますが、これがわかんなかったらもうクリストファー・ノーランの映画とか見れないですから。

ノーラン、いまだ余裕でヒットメイカーですしね。

私が思うに、ちょっと自家中毒気味だったかな、というのがまずあって。

過去の自分と遭遇し、二人で協力して別の次元宇宙でスーパーマンの敵と戦う話なんですが、どこか他人事っぽい感覚がつきまとう部分が見え隠れしていて。

ぶっちゃけ、フラッシュは、今居る次元宇宙が壊滅しても大きく問題はないわけですよ、また光速を超えて自分の世界に戻ればいいだけだから(感情的な問題はあるにせよ)。

それが主人公の危機感、切迫感を希薄にしてる。

実際、アクションシーンも主役で大活躍だったわけじゃないですしね、フラッシュの映画なのになぜかサポートっぽい役回りで。

自分で蒔いた種を刈り取ることができず、自分の世界で勝手に一人苦悶してバッドエンド風に次元宇宙を後にしまったのもあんまり後味良くない。

さらに、このパターンのマルチバース的展開は、すでにスパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム(2021)がやってますからね。

なんだよ、DC、後追いかよ、ってな二番煎じな印象はどうしたってつきまとう。

主人公が自分の失敗をなんとか取り繕うことに終始するんじゃなくてね、自身が矢面に立たざるを得ない覚悟のあり方、勇ましさみたいなものをもう少し演出するべきだったかな、と。

ヒーロー映画なのに、スカッとしないんですよね(それが他とは違ってていいんだ、というのには同意しますけど)。

結局、それらいくつかの要因が複合して「ヒーロー映画はもう飽きられているのかもしれない」という作り手側の諦観を導いたのではないかという気がしますね。

いや、私はよくできた映画だと思いますね、らしくはないかもしれないですけどね。

だって興行的に惨敗した、って知らなきゃ何がだめなんだろう、って考えたりもしなかったと思いますしね。

後年、評価が急にひっくり返りそう。

ま、時代の転換期なのかもしれません。

量産しすぎたのは確かですしね。

とりあえずアメコミ映画が好きな人にとっては失望することはない1作だと思います。

外野に惑わされずに見てほしい、とは思いますね。

タイトルとURLをコピーしました