アメリカ 2023
監督 デビッド・ゴードン・グリーン
脚本 デビッド・ゴードン・グリーン、ピーター・サットラー
「やっぱりいろんなことに配慮しなくちゃね、時代が違うしさあ」・・で、コレ
『およそ50年ぶりとなるエクソシストの正当なる続編』との触れ込みですが、ジョン・ブアマンがメガホン握ったエクソシスト2(1977)はとりあえずなかったことになってるのか、それとも原作者ブラッティが制作、脚本、監督を兼任したエクソシスト3(1990)の次、という解釈でいいのか、少し考え込んだりはしたわけだけれども、多分、フリードキンが監督した伝説的一作、エクソシスト(1973)の続き、と解釈すべきなんでしょうね、きっと。
どこかでアナウンスされてるんでしょうけど、私の目にはとまらなかった。
ただまあ正直なところをいうと、正統なる続編であろうとなかろうとね、エクソシストのあらすじ自体をほとんど忘れてる、って話だったりはするわけですよ。
だってエクソシスト見たのがおよそ30年ぐらい前だからなあ。
リーガンの首が回転したことぐらいしか覚えてない。
この作品のためにわざわざエクソシスト(1973)をもう一度見直すのも正直、億劫。
昔見た映画をもう一度見るなら、自分のタイミングで手に取りたいんですよね、私は。
ま、エクソシストが悪魔憑きと悪魔祓いの戦いを描いた画期的な一作であることは間違いないですし、教会にはエクソシストと呼ばれる存在がある、と広く世に知らしめた功績は映画界のみならずホラー界隈における新たなるテンプレートを作り上げたとすら認識してますが、だからといって続編が求められているか?というと微妙な気がしてて。
エクソシストが公開されて以降、恐ろしい数の類似作が量産されてきたことを考えるなら、伝説的作品の直属たる後継とはいえ、飛び越えなきゃならないハードルは恐ろしく高いと私は思うんです。
つい最近もヴァチカンのエクソシスト(2023)が大きく話題になったばかりですし。
うーん、ますます予習する気がなくなって・・・ってな感じでね。
多分、普段あまり熱心にホラー見てない人をターゲットに、今回は釣り上げちゃるでぇ!と制作側は思ってるのかもしれないですけどその手のパターンってすっ転ぶケースが多い気がするんですよ(実際、大きくすっ転んでデビッド・ゴードン・グリーンは続編から降板しちゃったわけだけれども)。
んでまあ、いいか、って見たわけです、とりあえず。
あらすじとかわかんなきゃわかんないであとから調べよう、って。
そしたらだ。
続編とは思えないぐらいエクソシスト(1973)に連なるものがなくて。
いやいやこれ、リーガンのお母さん役の女優さんが久しぶりに出てるだけやん!って。
リーガンにかつて取り憑いた悪魔が性懲りもなくまた現れた(悪霊パズズ)、ってわけでもないみたいですし(違うのか?)。
つまりは、普通に悪魔祓いを描いた、普通のエクソシスト映画になってるわけですよ。
なんの意外性もなければなんら新生面も見当たらない。
いやいやどうするの、マジでこれどうするの、と見てる私が焦ってしまう有り様で。
いやね、決して出来が悪いわけではないんです。
ただ、あまりにもこの手の映画としては通俗かつ凡庸で。
エクソシストの続編である必要がまったくない、という。
とり憑かれた少女二人の演出に、どこか手心を加えてるように感じられたのも気になった。
かつてリーガン役のリンダ・ブレアがやらかした背徳の所業(神職者があまりの冒涜ぶりに真っ青になったアレ)の半分もメーター振り切ってないんですよね。
二人も雁首そろえておきながらせいぜいゲロ吐くか暴言吐くぐらい、ってどういうことだ、と。
『いかに創作で映画だからとはいえ、今の時代、少女の役者にあんまり無茶はさせられない・・・』、ってことなのかもしれないですけど、批判を恐れてトーンダウンするぐらいなら最初からエクソシストの続編撮ろうなんて思うな!って話でね。
手心を加えているのがわかる悪魔憑き少女に誰が恐れおののくんだよ、って。
さらには、おそらく多様性に配慮したんでしょうけど、多人種が雁首揃えて素人なりにみんなで悪魔祓いしてみよう、とする後半の展開も脱力でね。
ド素人が数をなせばなんとかなるような事象であるなら、最初からバチカンもエクソシストも必要ないわけであって。
うーん、人の目を気にし過ぎ。
デビッド・ゴードン・グリーンはプロの仕事をしてると思いますが、多方面に気を使いすぎてホラーが本来抱える忌まわしさであったり、タブーに切り込むやばさだったりが平滑化してしまってるように感じました。
あんまりホラーに耐性のない人にとってはそれなりに楽しめる一作かもしれませんが、エクソシスト(1973)の頃からずっとホラーみてるような頭のおかしい人(私のことだ)は騙せないかと。
もうそろそろ悪魔祓いも昔ながらの根比べではなく、法則性なり、そのアルゴリズムなりを明確にしていっていいのでは、と思うんですが、そんなこと考えもしなかった風の作劇がさらに意気消沈でしたね。
三部作にする計画らしいですが、もうやめておいたほうが・・・というのが正直な感想でしょうか。
ねじレート 55/100