2023 アメリカ
監督 チャド・スタエルスキ
脚本 シェイ・ハッテン、マイケル・フィンチ
キアヌ・リーブスを喰わんが勢いでドニー・イェン大活躍の第4弾
もはや巧みに物語を紡いでいこうとする工夫も放棄した気さえする大ヒットシリーズ4作目。
ネタバレになっちゃいますけどね、そりゃビルから転落してもムクリと起き上がってあたふたと走り出す、なんてことをやらかしちゃったらね、常識的でまともなストーリーなんて金輪際展開できませんよね。
ジョン・ウィックはスーパーサイヤ人なのかよ、って。
タフさがひでえインフレ起こしてますから。
で、そんな風にタフネスぶりが人間超えちゃうとね、どれほどの攻撃を加えればこの男は死ぬのか?って部分で『強さ』も同時に手加減できなくなって急騰しちゃいますから。
それこそスカウターでも持ち込まないことには争いに、一気に現実味がなくなってくる。
・・・・これどうする気なんだろう、この先、と思ったのが前作のエンディング後。
でまあ、冒頭で書いたようになんとか軌道修正しよう、と制作側は全然思ってなくて。
「いや、ビルから落ちても死なないんだよ、ジョンは」と開き直る有り様で。
今作でも10階ぐらいから落ちてますからね、ジョンは。
・・・・・つっこませない気かよ、って遠い目。
それはそれとして(いやいや、それはそれとしてじゃねえだろ!と思うけど)今回はとりあえず日本へ行ってみるかー、としたのがおそらく第4弾なりの飽きさせないための謀事なんでしょう、きっと(いや、そういうことじゃなくてね・・・と思うけどね)。
もちろんジョンの日本行きにストーリー上の意味は全くありません。
すがすがしいまでに冷やかしでしかない。
真田広之になんか役を振りたかっただけとしか思えぬ作劇は、もはやエクスペンダブルズ(2010)並みにスターキャスト顔見世興行状態。
ま、雰囲気だけはやたらハードボイルドかつフィルム・ノワールな感じなんだけど、恐ろしく中身ないですからね、いつもにもまして。
もう主席連合とか、だんだんどうでもよくなってくる。
いつまでドタバタやってんだよ、みたいな。
そんな中、唯一気を吐いていたのが盲目の殺し屋役でキャスティングされたドニー・イェン。
相変わらず髪型が変なんだけど、西洋人目線で見たところの得体のしれない東洋人を見事に体現してて。
これがチャド・スタエルスキの演出ならすごいな、と。
なんかね、すげえ怪しいんですよ、とても2020年代とは思えぬレベルで。
おかしな例えかもしれないですけど私はノーカントリー(2007)に登場したハビエル・バルデム演じる気味悪い殺し屋と同じ匂いがしたような気がした。
また盲目で仕込み杖を振り回すドニーのアクションが素晴らしくて。
キアヌ・リーブスのアクションが素晴らしいのは今更言うまでもないんですが、そんなキアヌですら霞んでしまうキレとスピードでね。
どこも見てない風なのに的確に投打を当てていく動作設計に感心しきり。
本場香港のアクションスターはここまでスキルが違うのか、と驚きですよ。
よく知ってるつもりだったんだけど、同じ画面に並びたつとこうも差が出るもんなんだなあ、って。
これ、言うなれば座頭市のアップグレードバージョンじゃん!と私は思ったりもした。
いや、ちょっと想像してみてほしいんですけどね、恐ろしく怪しい盲目の東洋人がキレッキレのアクションで仕込み刀振り回すんですよ、そりゃ釘付けになるだろ!って話で。
スピンオフ制作も納得のキャラ立ちぶりに感服でしたね。
ま、早い話が第4弾はドニー・イェン演じるケインが全部持っていった、って感じですね。
あとはパリ凱旋門でのカーアクションと、クライマックス直前の階段落ちが見どころ満載でしたが、前者はドニー・イェンのカンフー・ジャングル(2014)最後の見せ場が元ネタって気がするし、後者はさしずめ蒲田行進曲(1982)のパクリといったところでしょうかね(多分違う)。
まさか戦艦ポチョムキン(1925)のオデッサの階段ってことはないと思うんだけど(だから違うってば)。
さすがにね、4作も続くと革新的なアクションシーンを次々と生み出してきたジョン・ウィックシリーズもアクション、ネタ切れって感じではありますね。
多分、それを察知したうえでの真田広之とドニー・イェン抜擢だと思うんで、利口といえば利口だとは思うんですが。
さて、第5弾はあるのかないのか?
ラストシーンを額面通り受け止めるならこれで終わりなんでしょうけど、なんか続きそうな気がするなあ、私は。
全く中味はないけれど、必ずヒットに繋がるお化けコンテンツとして続いていって欲しいような気もするんですけどね。
ねじレート 60/100 ドニー単独で評価するなら満点笑