ドラキュラ デメテル号最期の航海

2023 アメリカ
監督 アンドレ・ウーヴレダル
原作 ブラム・ストーカー

ブラム・ストーカーの小説「デメテル号船長の航海日誌」の初映画化らしいんですが、そのトピックにくすぐられる人って、ものすごく少ない気がするんですがどうなんでしょう?

熱心なホラーファンでもない限り、ドラキュラがブラム・ストーカー原作ってことすら知らんと思うんですけどねえ。

それ以前に今何故ドラキュラ?ってのはあるわな。

海外では、再びブラム・ストーカー再評価の機運が高まってたりするんですかね?

そんなの小耳に挟んだこともないが。

至極日本人的感覚なのかもしれないですけどね、いかに歴史あるアイコン的怪物とはいえ、今更ドラキュラ伯爵で何ができるっつーんだよ、と思ったりするわけです。

亜流やら進化系やらハイブリッドにハーフまで、散々出尽くしたがゆえの原点回帰なのかもしれないですが、新鮮味のなさで言えば、前年に食べ残したまま忘れて干物になってしまった沢庵並みに、見るに耐えないものがありそうな気がして。

だってどう料理したところで、モダンにも斬新にもなりそうにないですし。

もう王道に、ゴシックな怪異譚として仕上げるしかないじゃん、と思うわけです。

そんなの今更見たいか?と問われれば、瞬時悩みはすれど、結局口ごもってしまうしかなくて。

ま、アンドレ・ウーヴレダルがメガホン握ってるんでね、一定の水準はキープしてるだろうな、と予測はしてたんですが、さて、これがだ、皆様方。

ほんとにキープしてただけだったりするんで、驚くことうけあい。

いやもうね、最後まで見てあたしゃ思わずつっこんでしまったわ。

なんの意外性もないやないかーい!と。

そりゃま、それなりに見どころはありますよ、乗組員ではなく船医が矢面に立つ展開とか、不法乗船していた女の謎とかね、手堅く面白味を損なわぬストーリーテリングよな、と。

きちっとポイントは抑えてると思う。

ただ、その全てが想像の範疇にあって、たいしたスリルもないだけであって。

そもそも密室(航海中の船上)で吸血鬼って題材そのものが不利すぎる、と私は思わなくもなくて。

だってやってることはSFホラーの名作、リドリー・スコットのエイリアン(1979)とほぼ同じですから。

以降、何十年も似たような作品が頻出したことを振り返るなら、いかにドラキュラとはいえ、これはしんどすぎるプロットだろうと。

ブラム・ストーカーは悪くないんだけど(きっと小説発表当時は大きく話題になったんでしょう、読んでないからわからんけど)、後発の映像に全部追い越されちゃってる状態ですからね。

映像化を推した人間の見込み違い、その一言に尽きますね。

どうしてもこれをやりたかったのなら大きく改変、翻案して、例えばミステリにするとか、目鼻立ちを変える作業が必要だったように思います。

ヒットしたのかどうか知らないけど、早々と内容忘れる自信があるな、私は。

アンドレ・ウーヴレダルは今、アメリカでやっていくために仕事選んでないのかもしれないけど、結局トロールハンター(2010)が一番面白かった、・・・みたいなこと言われちゃうのはあんまり良くないと思うぞ、私は。

職業監督になってほしくはないんだが・・・。

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