2023 シンガポール
監督、脚本 J・D・チュア
地下鉄を制御するシステムの誤作動のせいで、廃路線に迷い込んでしまった列車が怪物と遭遇して乗客皆殺し、ってなパニックホラー。
シンガポールの映画って、これまで見た記憶がないんですが、この作品に限っていうなら2時間テレビドラマクラスです。
いや、それなりに予算は計上されてるんでしょうけどね、せっかくの予算も作品の完成度にまるで貢献していない、というね。
一番の難点は、全然怖くないことにあると言っていいでしょう。
この手のプロットの映画って、あえて顧みるまでもなく大量にあると思うんですが、ディセント(2005)やデル・トロの出世作ミミック(1997)の半分も怖くないもんなあ。
閉鎖空間に潜む得体のしれない怪物の見せ方が全然なってないんですよね。
なんかちょこまかしてるだけでね、薄気味悪くも不気味でもなくて。
怪物の造形もよろしくない。
多分モチーフは恐竜なんでしょうけど、トリケラトプスが角を忘れてきたようなデザインなんですよね。
なぜわざわざ草食恐竜に似せる?って話で。
これを『グエムル 漢江の怪物』と『新感染 ファイナル・エクスプレス』を融合させたモンスター・サバイバル・アクション!などと宣伝してはいけない。
それって詐欺だから。
激高されるレベルで大嘘だから。
ちなみに筆頭で激高してるのは私だけどね。
また、ドラマの作り込みも適当で。
やたら地下鉄運営会社の内情の描写に尺を割くんで、サブウェイ・パニック(1974)みたいな感じで地下鉄の管理センター側からみた乗客救出作戦に焦点が絞られるのかな?と思いきや、そうでもないし。
怪物の正体をほのめかす少年の存在も結局は放置だし。
管理官と娘の絆がサブテーマなのかな?と思わせておきながら、まったくアフターフォローなしであの結末だし。
至極シンプルに、未熟であるとしか言いようがない。
体裁だけは整ってるんですけどね、なんの爪痕も残さぬ映画でしたね。
せめて主人公親子の親子愛みたいなものを劇的に描けてたらまた違ったか、と思うんですが、それもままならない有様ですしね。
コロナの影響及びハリウッドのストライキ、ディズニープラスの囲い込みのせいで供給量が圧倒的に少なくなってるレンタル洋画業界ですが、だからといってこんなものまで拾ってこなくていいんだよ、と強く思った視聴後の私でございます。
これなら北村龍平のミッドナイト・ミート・トレイン(2008)のほうがよっぽど良かった。
あんまり褒めてないですけどね、私。
すまん、今更だけどこういうのを見るとあなたの素晴らしさを改めて実感しちゃったよ。