2021 アメリカ
監督 ジョン・ワッツ
脚本 クリス・マッケンナ、エリック・ソマーズ
2017年より仕切り直しされたジョン・ワッツ監督版スパイダーマンの三作目。
はっきりいって、1ミリの期待もしておりませんでした。
旧スパイダーマンは2シリーズ共に(サム・ライミ監督版、マーク・ウェブ監督版)大好きだったんですけど、本シリーズに関しては、1、2作目共に阿呆な高校生の青春ときめきグラフィティとしか思えなくて、こんなのスパイダーマンじゃねえ!とむかっ腹たててた次第でして。
正直、スルーしようか、とも思ってたんですけど、あまりに見た人の評価が高いものだから。
そこまで絶賛する人が多いなら、とりあえずこれが最後のつもりで見てみようか、と。
前半、ああ、相変わらず甘ったるい青春ものだなあ、と。
もうね、この手の若さが故のうす甘いヒューマニズムって、私は大嫌いなんですよ。
生き馬の目を抜く競争社会で何年か仕事に従事してから言え!と。
この世に根っからの悪人はいない、みたいな性善説の押し付けにもうんざり。
優しいだけでスーパーヒーローが務まるとでも思ってんのか!馬鹿!と誰も聞いてないのに一人吐き捨てる私。
いやそりゃね、ドクター・オクトパスやグリーン・ゴブリンが再登板してるのには少し驚きましたよ、でも過去キャラですら新しいスパーダーマンの流儀というか道徳観に染めようとしているのが私はホント気に食わなくて。
もう頼むからいじくってくれるな、と。
過去作の良いイメージさえもぶち壊しになっちゃうから。
途中で見るのをやめようかな・・・とも思ったんですけどね、終盤に驚きの仕掛けがある、と聞いてたんで、ま、もう少し我慢するか、と。
そしたら、だ。
もうね、マジで驚いた。
ここ数年、これほど驚いたことはない、ってレベルで驚いた。
すでに広くネタバレしてるんでしょうけど、私がこの映画を見たときは情報がもれないようにシャットアウトされてる時期だったから。
ああああああああ、あの人があああ!!!と思わず中腰に。
なるほど、マルチバースとはこのことを意味してたのか、と仰天。
厳密に言うとね、これ反則だと思うんです。
マルチバースとメタは違いますしね。
でももうそんなことどうでもいいぐらい興奮状態にある私。
そりゃ20年前からずっとリアルタイムでスパイダーマンを追ってきた人間からしたら、これで興奮しないほうがおかしい、って話でね。
もうね、意味なく泣きそうになったよ、私は。
まさかこんなことが実現するなんて、欠片も思ってなかったからさ。
また、前半でいちいちうっとおしいと思った主人公の言動が、最後の最後に「それでも命を賭して救う覚悟」として描写されてることに私は感服しましたね。
そうか、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、それでも愚直に信じる道を行く強さがあったのか、君には、と柄にもなく感動。
完全にしてやられました。
こんなことしたらもう次作作れないぞ!と思ったりもするけど、三作目にして全力で対峙してきたことに今はただ賞賛を送りたい気分。
昔からあるパターンと言えばそうですけど、今回に限っては、まさかこのシリーズでやるとは思わなかった、ってな意味でアイディアの勝利でしょう。
勧善懲悪を超えていこうとする集大成的一作、まさに大いなる力には大いなる責任が伴う、を地で行く作品。
私のようなうるさいオールドファンも納得じゃないでしょうか。
とりあえず、前半でくじけてはいけない、とだけ。
あ、あとドクター・ストレンジのミラー次元の絵面にはちょっと舌を巻きました。
すごいイマジネーションだな、これ、と。
こういうことをやられると今度はドクター・ストレンジの新作が気になってくるんですよね、うまいよなあ。