レンフィールド

アメリカ 2023
監督 クリス・マッケイ
脚本 ライアン・リドリー

古の吸血鬼、ドラキュラ伯爵とその下僕であるレンフィールドの主従関係を描いたオカルトコメディ。

ん?ドラキュラ伯爵にレンフィールドなどという手下がいたっけ?と一瞬首を傾げたんですが、吸血鬼映画そのものがブラム・ストーカーの原作を逸脱して多種多様に好き勝手発表されてきたわけだから、ま、そこはこだわらなくていいか、と。

とはいえ、ドラキュラという吸血鬼の元祖とも言うべき大看板を持ち出してくるのは、いささか安直かな、という気がしなくはありません。

見る人それぞれにそれぞれのドラキュラ像があることでしょうし。

ましてや現在までドラキュラは生きながらえていた!とするならなおさら。

そんなの、見る前から胡散臭いというか、恐ろしく現実味に欠ける印象しか抱けないですよね。

さしずめ日本で言うなら、酒吞童子は大江山で令和の今も生きながらえていた!ってやらかすようなもの。

嘘つけっ!って話ですし。

ゆるいファンタンジーなんだね、という先入観を、前もってわざわざ観客に知らしめるのはあまり得策とは言えないように思います。

どうせならドラキュラのひ孫ぐらいにしときゃ良かったのに、と思うんですが、ニコラス・ケイジが演じてるドラキュラを大きなアピールポイントにしたかったのかもしれません。

確かにニコラス・ケイジ、想像以上にドラキュラ役がはまってました。

ここ数年は、作品を選ばずにところかまわず出演し、自らをダンピングしまくってたニコラスですが「ああ、この人はやっぱりうまい役者だったんだな」と再認識したのは間違いないです。

個人的にはゴーストライダー(2007)よりもずっとマッチしてるように感じた。

ちゃんと不気味で怖いんですよね、コメディなのに。

ただ、物語の指向性がお笑いに色気を見せてて、ドラキュラに振り回される残念な下僕のドタバタでご機嫌を伺おうとしてるんで。

せっかくの怖いドラキュラも、恐怖で弾圧するのではなく、理不尽なわがままで迷惑かけてくれないとなかなかおかしさには直結しない。

どこか真面目なんですよね。

それは物語の落とし所も同様で。

エクソシストが見たかったわけじゃないと思うんですよ、この映画を見ようと思った人たちは。

もっともっとどぎつい悪ふざけがあってよかったと思いますね。

それこそ全部元の木阿弥で終わっちゃうようなナンセンスさを見せつけるぐらいでちょうどよかったと思う。

あと、レンフィールドがどういう生態?なのかよくわからないのも、あんまりよろしくなかった。

吸血鬼に血を吸われた人間は吸血鬼になる、が不文律なんじゃねえの?と思うわけです。

怪力と不死身性ばかりをクローズアップされてもねえ、ルールが不透明になるだけですから。

ドラキュラの下僕たる縛りをちゃんと説明してくれないとね、さっさと逃げりゃいいじゃん、ってツッコミが成り立っちゃうんですよね。

ヒロイン役を担うラッパーのオークワフィナが思ってた以上にダイコンだったのもマイナス。

この人、細かな感情の揺れ動きを演じることが全然できなくて。

なのでレンフィールドがオークワフィナ演じるレベッカに影響される展開に、全く説得力がなくてね。

こんなにも没感情気味な女、逆に怖いわ、と思えてくるほど。

エンディングでご都合主義的に、登場人物たちを片っ端から救ってしまうのも良くなかった。

割とね、血飛沫舞い散る露骨な残虐描写とかあるんですけど、実は大丈夫だったんですよ、なんてやられちゃうとかえって冷めるというか、なら最初からやるな、と思ってしまいますしね。

やりきるつもりがないなら中途半端にホラーファンの顔色伺うんじゃねえよ、ってこと。

総ずるなら、ニコラスのドラキュラは良かったが、シナリオが中途半端に甘ったるくて結局どうしたかったのかいまいちよくわからない、といったところでしょうか。

しかしPIG/ピッグ(2021)の次がこれか、と。

振り幅半端ねえな、ニコラス。

タイトルとURLをコピーしました