逆転のトライアングル

スウェーデン 2022
監督、脚本 リューベン・オストルンド

モデル業で生計を立てている美男美女カップルが、招待をうけて豪華客船クルーズに出かけたはいいものの、船が難破、挙げ句無人島に漂着してとんでもない目に遭うブラックコメディ。

前作、ザ・スクエア思いやりの聖域(2017)に続いて二作連続でカンヌのパルムドールを受賞したリューベン・オストルンド監督の作品なわけですが、まあ、前作よりは噛み砕きやすく、親しみやすい内容にはなってます。

ザ・スクエアは私にとってなんだかぴんとこない映画だったんで、本作もそれなりに警戒してたんですが、これが予想外にキャッチーな仕上がりでして。

変に屈折してないし、笑いの筋道が真っ当。

どっちかといえばベタな笑いなんですけど、それがむしろ痛快だったりもして。

あらこの人、こんな風に大衆受けしそうな味付けもできるんだ、と。

とはいえ皮肉満載で、ルッキズムだの人種差別だの拝金主義だのに対する嫌味がダダ漏れしてる内容ではあるんですけどね。

3章に章立てされている構成なんですが、物語が進むにつれてどんどんラジカルに、建前やモラルがぶっ壊れていく印象。

1章の段階では面倒くさい男が手前勝手な小理屈をこねまわしてるだけなんで、どこへ向かおうとしてるのかさっぱり予測がつかない、というか大丈夫なのかこの映画?って感じなんですけど、俄然面白くなってくるのは2章から。

出てくる人物、片っ端から暇を持て余したスノッブばかりでね(金持ちなんだけど)、よくまあここまで悪意満載に描写できるな、と。

そんな連中に振り回される乗組員もどこか変で(酔っぱらいの船長とか)。

それらすべてを俯瞰する目線で冷静にじっくりと追っていくもんだから、まるで写実主義なコントのようにも映って。

さあ笑わせてやるぞ、と構えてないんですけど、緩急や落差で笑ってしまうんですよ。

そして仰天の展開が待ち受けてるのは3章。

あ、これ、当時さんざん叩かれまくったマドンナ主演のスウェプト・アウェイ(2002)と同じ展開じゃん!と思ったんですけど、こりゃオリジナルである流されて・・(1974)と同じ、というべきか。

しかしまあ、1章の流れからなんで無人島にまで話が飛ぶ?とそのジェットコースターぶりにやや呆れたりも。

採算度外視(知らないけど)でやるにしたって詰め込みすぎ、というか。

だから結局なにを伝えたいの?というか。

結局、職業や身分や財産をとっぱらって裸にすりゃ、人間の価値なんて全く違ってくるんだよ、ってことなんでしょうけど、もう少し題材に沿ってテーマを絞り込んでも良かったかな、と思わなくはないです。

値段の割には豪華すぎる幕の内弁当なんですけど、ボリュームがありすぎて食べてる途中でお腹いっぱいになっちゃうんですよね。

ラストシーンがなんだか曖昧なのも賛否の分かれるところでは、と思います。

エンディング、まあそうなるだろうな、ってところから更にひっくり返してほしかった気もします。

総ずるなら、盛りだくさんで面白いんだけど、やや散漫に感じる人もいるかも、ってところでしょうか。

ま、カンヌ受賞作にしては驚くほどポピュラーな作品だと思いますね。

なのに監督の作家性が薄れているようには感じない、というのが一番評価すべき点かも。

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