アメリカ 2002
監督 ガイ・リッチー
脚本 リナ・ウェルトミューラー
74年作のイタリア映画「流されて・・・」のリメイク。
主演に当時監督の嫁だったマドンナを抜擢。
とんでもなく高飛車でわがまま放題なブルジョアの婦人が、船旅の途中で接待役だった水夫と二人きりで無人島に漂着してしまったことで、それまでの立場が逆転してしてしまい、水夫にアゴでこき使われるようになってしまう・・・という、抑圧されたお父さん達の妄想のような物語なんですが、まあ、結論から言うとやっぱり安い妄想だったかな、と。
とりあえずマドンナ主演、というのが私の感覚ではミスキャストですね。
彼女の役者としての評価はよく知らないんですが、この映画を見る限りではダイコンです。
婦人の細やかな心の変化を演技できてるとは言い難い。
またハードなステージに備えるためなんでしょうけど、彼女、細身の割にはやたら筋骨隆々なんですよね。
総合格闘技の女ファイターかよ、ってな色気のなさで。
水夫に屈服しなくても一人でやっていけそう、ってな見目なんですよね。
やっぱりね、この映画にエロスは必要不可欠だと私は思うんですよ。
そもそも物語の構造自体がポルノみたいなものですから。
エロが欠落したままじゃあ、ストーリーが勢いよく転がっていかない。
そこをきっちり抑えてこそ、やっと次の着地点が模索できるわけで。
そのあたり、ガイ・リッチーはどう考えていたのかよくわからないんですが、なんかね、妙に手加減してるんですよね、マドンナに対して。
一切脱がないわ、扇情的なシーンは撮らないわで、もしやこれを愛の物語だ、なんて勘違いしてるんじゃねえだろうな、ってな体たらくぶり。
いや別にね、マドンナのヌードが拝めなかったことに腹を立ててるわけじゃないんです。
当時44歳だった彼女にどうしても脱いで欲しかった理由なんて私の中にはない。
私が言いたいのはあえてマドンナでリメイクするなら、オリジナルのヒロインだったマリアンジェラ・メラート以上のものを提供できなくてどうする、ってことであって。
たとえ三文ポルノだろうと、それを最高の三文ポルノにするための心血注いだ取り組みができないんなら、中途半端に知名度だけのポップスターを映画に出演させたりしてんじゃねえ、と私は思うわけです。
ダメな映画、とは聞いてたんですが、ガイ・リッチーがメガホンとってるし、もしや・・・と思って見たんですが、想像していた以上にダメダメで本当に辟易。
メロドラマとしてすら成立してないな、と私は思いましたね。
擁護できる点があるとしたら、端役のキャラづくりのうまさ等、監督らしさは損なわれていない、と思えたことと、アンバーが歌い踊るシーンでマドンナ、まるで別人であるかのようにスター性を発揮してて、ああ、役者としてダメなだけで稀代のエンターティナーであることは間違いないのだな、と思えたこと、ぐらいですかね。
駄作ですね。
監督の尻込み?身内びいき?が、もしかしたら屈折した愛情の解放を謳う作品になったかもしれないものを、おばさまの火遊びを描いたかのような内容になってしまった残念な一本。
まあでもよく考えたらオリジナルもハーレクイン・ロマンスみたいな感じでしたけどね。
リメイクしようと思ったのがそもそもの間違いか。
コメント
[…] そんなにスウェプト・アウェイの失敗がショックだったのか、ガイ・リッチーよ。 […]