アメリカ 2022
監督、脚本 ジョーダン・ピール

南カルフォルニア郊外の田舎町に、突如現れた不気味な飛行物体を巡る騒動を描いたパニックスリラー。
なんせジョーダン・ピールだから今回も一癖二癖あるややこしい映画に違いない、と幾分身構えてたんですが、終わってみれば予想に反してわかりやすくシンプルな物語で拍子抜け。
これをジャンル映画と言い切ってしまうと、多方面から「お前は何もわかってない!」と大きな反発を食らいそうですが、私の中ではトレマーズ(1990)とあんまり大差ないですね。
土中なのか、空中なのかが違うだけで。
序盤、これは絶対に未確認飛行物体でなんならX-FILEの案件、と観客をミスリードする手際は普通に上手だなあと思いましたが、他はそれほど裏読みに躍起になるほどではないんじゃないかと。
たしかに多層的ではあります。
ゴーディーズホームというアメリカのホームコメディに出演していたチンパンジーの逸話や、当時出演していた子役の顛末、撮影所における黒人調教師の扱い等、掘り下げだしたら幾重にも隠された意味が浮上してくる(ように思える)。
カリカチュアなのか?これは?と勘ぐりたくなる象徴的なシーンや場面もいくつかあって。
けどそれら全部を放置しておいても別段問題ない、と思うんですね、このオチならね。
多分、全米初登場1位になった理由であり、実際映画館に足を運んだアメリカ人が面白がった事って「そこ」にはない。
単純に「マジかよ、空にいるのかよ!」と喜んだだけだと思うんですよ。
今回、監督を褒めるとするなら、深読みしたい人はどうぞなさってください、とばかりに物語を思わせぶりで意味深な構造にしつつも、トータルで完全なエンタメとして仕上げたところにあったのではないか、と私は思います。
やたらスケールがでかいというか、舞台そのものが広大な割にはやってることがB級ホラーっぽいってのも気に入りましたね。
大金ぶちこんで大真面目にバカをやるとでもいいましょうか。
ま、バカというと語弊があるかもしれないですけど、余計な枝葉を取り除いてストーリーの骨子を裸にしてしまえば、実は荒唐無稽なワンアイディアをもっともらしく見せるために心血注いだだけなのでは?と思うんですね。
ゲット・アウト(2017)の驚愕な真相といい、笑わせたいのか?本当は?と小首をかしげるようなことを時折やらかす人でもありますから。
世間はジョーダン・ピールに意味を求めすぎ、という気がしなくもありません。
痛快なエンタメ娯楽作でいいんじゃないでしょうか。
続編作ったら当たりそう。
私はUSアス(2019)より好きですね。