スウェーデン/ドイツ/フランス/デンマーク 2017
監督、脚本 リューベン・オストルンド
さて、この映画、いったいなにをどう評すればいいのか、非常に悩む自分がいたりします。
主人公は美術館のやり手キュレーター、クリスティアン。
ある日、道行く女性を助けようとしてクリスティアン、財布をすられてしまうんですね。
その後紆余曲折あって、自分の財布をすったのが、とある集合住宅に住む中の誰かだとわかる。
主人公、何を思ったか脅迫めいたビラを全戸にポスティングするんですな。
「財布を返さないとひどい目にあわすぞ」みたいな。
そしたらなぜか子供がそのビラに反応してクリスティアンを訪ね、本人を口汚く罵倒する。
「お前が変なビラを撒いたせいで俺は親から泥棒扱いされた!謝罪しろ」と。
そんなのいちいちまともに相手してられない主人公。
なんせ新しい企画を立ち上げたばかりで仕事が忙しいし、二人の娘の相手もしなきゃいけない。
でね、ここから文句言ってきた子供を布石として思わぬ方向に物語が転がりだすのかな?などと私は想像をめぐらせたりもしてたんです。
ところがだ。
監督は「それはそれとして」みたいな感じで別のエピソードをせっせと挿入しだす。
主人公と変な女性記者のラブアフェアを追ってみたり、主人公が担当する企画のプロモーションビデオの炎上事件を描いてみたり。
最後の最後に財布の件へと物語は立ち戻ってくるんですが、それもねー、何ら解決したとは言い難いすっきりしない顛末で終わってまして。
なんなんだ?いったいこれは?と。
ぶっちゃけ物語の体をなしてない、と私は思うんです。
やり手キュレーターの転落劇といえばそうなんでしょうけど、そもそも監督は「転落」に焦点を合わせようとしてないですしね。
一貫してるのは「善意や誠実さなんてものは自分の都合で簡単にその色を変えるものだ」とでもいいたげなニヒリスティックな視線。
露悪的、ってほどでもないんですけどね、なんかこう終始「みんなこんなもんだろ?中途半端に偽善者ぶるなよ?」とせせら笑われてるみたいな。
で、そこから何が導き出されるのか?というと、なんでこんな底意地の悪い映画をわざわざ151分もかけて撮るのか?って疑問でしかないと私は思うんですよね。
共感できないし、感動するわけでもない、何かに気づかされるわけでもなければ、手痛く打ちのめされるわけでもない。
カタルシス不在。
うーん、私にはわからないですね、この作品。
ひょっとして「未必の故意」を描きたかったのかな?と思ったりもしたんですが、多分違うんだろうなあ。
余談ですが監督はミヒャエル・ハネケが大好きだそうです。
なるほどな、と少し納得。
だからといってもう一度見ようとか、評価が変わるとかは全くないんですけどね、うん。