アメリカ 2020
監督 サム・ハーグレイブ
脚本 ジョー・ルッソ

2014年に発表されたグラフィック・ノベルを原作としたNETFLIXオリジナル作品。
ま、「おおむね想像してたとおりだった」とまるごと脇に片付けてさっさと他の作品に集中してもいいのかもしれないですけど、これがシンプルで一本道で既視感たっぷりな割には予想外に爪痕残してきやがるもんですから。
さすがはルッソ兄弟、というべきなんでしょうね、やはり。
少々やばめの仕事も引き受けるプロの傭兵が、さらわれた子供を奪還して敵陣を突破し、親元に送り届けるだけの話なのに、なんかね、不思議と盛り上がるんですよ。
やってることはランボー・シリーズと大きく変わらんし、類似作を数え上げたらきりがない程そこかしこで累々と立腐れてると思うんですが、作品全編を通して、アクションとドラマチックなシーンの描きわけをきちんとやったことが勝因だったのかもしれませんね。
お涙頂戴でクサいといっちゃえばそれまでなんですけど、泣かすべきは全力で泣かしにかかってくるんですよね、ジョー・ルッソ。
いや、鉄板なんですよ、なにもかもがね、ほんと鉄板なんですけど、相変わらず酔えるヒロイズムをでっちあげるのがやたらとうまくて。
アベンジャーズでならした手管は健在。
もうね、わかっていてもぐっとくる演出、ってのは出会い頭に回避するのが難しくてねえ。
くっそー、こんなのでじんわり感動とかしたくないのに、間違いなく今塩漬けだな、俺・・・ってなものですよ。
連続性にこだわったアクションの構築も上手だった。
私はサム・ハーグレイブって監督を全く知らなかったんですけど、調べてみたら相応にキャリアと研鑽を積んだ人らしくて。
有名な作品(アベンジャーズ、戦狼等)のスタントコーディネイトをこれまで数々手がけてるみたいで。
中盤のノンカット長回し(多分、ノー編集だと思う)を含め、高い臨場感があるんですよね。
ジョン・ウィック並みにこだわり抜かれた動作設計、ってわけではないんですが、それこそ汗の匂いや土埃が舞うのを間近で感じられるレベルの生々しさがあって。
カメラワークが達者なんですよね。
細かいカット割りが嫌いな私にとってはこりゃ文句無しで大歓迎な芸当。
117分を一気に見せきるだけの馬力と爆発力は間違いなくある。
唯一気になったのは、主人公であるタイラー・レイクのキャラクター設定が「優しすぎること」なんですけど、まあ、これはある程度は仕方ないのかもしれません。
どう考えても無慈悲に見知らぬ他人の命をガンガン奪っていく傭兵とは思えないセンシティブな性格なさってるんですけど、多分、アンチヒーローになりきれぬややダーティなヒーローの路線をねらったんだろうなあ、と思うんで。
そもそもクリス・ヘムズワースがいい人オーラ全開すぎる、って話だったりはするんですけど(どう見ても傭兵には見えない)。
とりあえず、期待ほどではない作品が目立つNETFLIXオリジナル映画のなかでは当たりの部類じゃないでしょうかね。
今のところ私が一番好きなのはバード・ボックス(2018)で、その次にオクジャ(2017)、オールド・ガード(2020)と続くんですけど、その次ぐらいには食い込んできそう。
あと、エキゾチックな中東美人、ゴルシフテ・ファラハニの存在感が素晴らしかったですね。
この人はうまくやればガル・ガドットになれると思う。
ま、ちょっとトウが立っちゃってるけど。