2020年初出 冨明仁
エンターブレインハルタコミックス 1~2巻(以降続巻)
いわゆるアンデルセンの人魚姫をそのまま換骨奪胎した、と言っていい気がします。
もちろん細部に相違はありますが、人間と人魚の報われぬ恋をテーマにしてる時点で引き合いに出されるのは避けようがないと思いますしね。
うーん、なんで今人魚なのかな、と。
前作ストラヴァガンツァに比べればお話もしっかりしてるし、ちゃんとストーリー漫画の体裁は整えてきたな、とは思うんですが、人魚を題材に物語を膨らませていくって相当難しいように私は思うんですね。
だって古今東西の映画や漫画や小説がさんざん改変やアレンジを加えて、あちこちで発表しまくってきた歴史がありますから。
これから新たに人魚でなにか創作やろう、って人は殆ど居ないと思う。
絶対に過去のどれかの作品とかぶるだろうし、なにより新鮮味がないですから。
それが証拠に本作を読むまで長い間エンタメの世界では人魚の話なんて目にしなかった(人魚姫というコメディ映画は近年発表されてましたけど)。
ちょっとね、どうしたかったのか、私には測りかねる部分がありますね。
漫画家としての力量は非常に高い人だと思うんで、普通に読んでられますが、続きを購読したい、と思うまでには至らず。
この先どうなっていくのか、なんとなく予想がついちゃうんですよね。
それをひっくり返してくれそうにもないし、作家性からして。
しかし冨明仁は手塚先生になんか思い入れがあったりするんでしょうかね?知らないですけど。
前作はリボンの騎士みたいだなあ、と思ったし、今作はなんだか海のトリトンみたいだなあ、と思った。
そんな大昔の漫画が脳裏を霞めるほどやり尽くされたネタなんだよ、ってことなのかもしれませんけど。
作者には現代劇でコメディやってほしいんですけどね、玲瓏館健在なりや(2010~)が結局一番おもしろかった気がするんで。
あと、男の人魚はやめて、とちょっと思った。
作画が達者だからなんとなく見てられるけど、リアルに想像すると凄まじく気味が悪い。
えっ、変に感じるのは私だけ?