羽人

2021年初出 宮尾行巳
講談社イブニングKC 1~2巻(以降続巻)

中国王朝時代風の架空な世界を舞台に、羽人と呼ばれる不老不死な人外の怪物を描いた歴史?ファンタジー。

秦の始皇帝をモデルにしたらしき人物(作者はあとがき漫画で秦か漢の時代ぐらいと言及)を取り巻く権力闘争がストーリーの主軸になっていくんですが、まずですね、ここまで中国っぽくするなら、わざわざ異世界風にする必要はなかった、というのがひとつ。

中国っぽいけど中国じゃないとした設定が逆に現実味を損ねるんですよね。

モチーフにするのはいいですよ、でもそこから想像力を喚起するオリジナルな小道具なり、ワードなり、しいては制度であったり、文化、国民性なんかを物語世界に持ち込んでくれないと架空である意味がない。

国の名前や役職名が史実とは違うだけで、それ以外に作品ならではの独創性が見当たらないんですよね。

中国を舞台にしようと思ったけど、人外の怪物が出てくるから架空の世界にしておこうかな、とでも思ったのかもしれませんが、大きな間違い。

これをやるならむしろ秦や漢を舞台にすべきだった。

その上で伝承なり口伝なりをもっともらしくでっち上げて羽人像を作り上げていたら、全く真実味は違っていたと思います。

振り切るわけでもない、リアルなわけでもない、なんだかどこか中途半端にファンタジーやってるような印象をうけるんですよね。

あと、世界にたった二人しか羽人はいない、とされているのに、あまりに近場で二人が遭遇しすぎ。

希少性を印象付ける演出とか全くなしでいきなりバトルですから。

全然ミステリアスじゃないんですよ、それこそ近所にもう一人ぐらいいるんじゃないか?と思えてくるほどに。

展開がまどろっこしいと今の読者は読んでくれないから、あえて手早く処理したのかもしれませんが、それにしたってあまりに内輪すぎる。

崑崙の山奥で仙人ぐらししてろとはいいませんけど、なんか安いんですよね、羽人の存在自体が。

それこそ鬼太郎に登場する妖怪並みに。

漫画家としての技量は高いと思いますし、前作五佰年BOXは私なりに評価してたんで、なんか残念ですね。

あー、こっちへ行ってしまうのかー、みたいな。

箸にも棒にもひっかからない、ってわけではないんですけど、私はのれなかったですね。

うーん、SFをやってほしかった。

次作に期待。

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