対岸のメル

2022年初出 福島聡
エンターブレインハルタコミックス 1巻(以降続巻)

この世あらざるもの(心霊だけに限らず、動物や虫の声とか)を知覚できる不思議な少女メルと、論理派の男子小学生清晴が、幽霊たちの満たされぬ思いを遂げて成仏させていく物語。

大枠でくくるなら、いわゆる心霊探偵ものになると思います。

で、心霊探偵ものって、映画や漫画を問わず、古今東西に山程あるわけだ。

読者に既視感を覚えさせず、それら過去の作品群を差し置いて頭一つ抜けるって至難の業だと思うんですね。

正直言って、1巻を読んだ限りではさして突出したものはなかったように感じます。

小学生コンビが事件を解決するという設定はあんまり見かけないと思うんですが、それが逆に足をひっぱってる形跡も見受けられて。

昭和の少年探偵ものじゃないんだから小学生がそこまでやれるものなのか?ってツッコミは絶対にあると思うんですよね。

大人の事情に踏み込むにも子供のキャパでは限界があるでしょうし。

そのあたりの境界線があいまいだと、どうしたって少年読者層対象の作品、と位置づけるしかなくなってくる。

主人公のメルが不思議ちゃん系であんまり頭良さそうに見えないのも難。

魔法少女じゃないんだから、たとえ女子小学生といえど人と違うものが恒常的に見えるようだと普通は口外しなくなるものだと思うんです。

承認欲求の強いインスタの一般人じゃあるまいし、学校行ってるならなおさら。

それでもあけっぴろげなままって、なにか人格に重大な問題があるか、最初からファンタジーのつもりなのか、のどちらかで。

どっちだったにせよ、作品にとって足手まといな設定でしかないと思うんですよね。

この作品にミステリの醍醐味を求めるなら、の話ですけど。

ここにきて、ボーイミーツガール的なかつての著作少年少女(2001~)をもう一度やる、ってのものれない提案ですしねえ。

近年の福島聡は強い作家性を薄めてプロットとドラマで勝負しようとする傾向にあると思うんですが、やっぱりね、性格俳優にいきなり主演を張れ、と言われても無理でしょうし、今の自分にそぐうアプローチをもう一度じっくり吟味し直していってほしいですね。

もう以前のようなことはできない、ってところから本作に至ったのかもしれませんが。

どうあれ私にとっては、これじゃない、って感じの一作。

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