2019年初出 ippatu
講談社ヤンマガKC 1巻(以降続巻)
フランスのマンガ誌Ki-oonで人気を博し、日本へ逆輸入された未来SF。
日本の漫画市場は縮小していくばかりで、もはや斜陽産業とも言われてますから、今後こういう形で日本人漫画家が海外デビューを飾るケースも増えていくのかもしれませんね。
漫画大国日本で、身近な多くの作品に思春期の情操教育を施された身としてはいささか複雑ですけど。
漫画誌が貴重になる日とか、いつか来るんだろうか。
私が生きてる内はご勘弁願いたい。
ま、それはさておき、肝心の内容についてなんですけど、恐ろしく絵がうまいことにまずは腰抜かしましたね。
絵がうまいと言われてる漫画家は今昔を問わず大勢おられますが、その中でも群を抜いてうまいことは間違いない。
背景の書き込みとかあまりに凄まじすぎて、こんなの月一の連載でも時間足りなくなるんでは、と思えるほど。
人物の表情のつけかたもやたらにうまい。
映画っぽいカメラワークを意識したコマ割りや視点移動等のテクニックもプロ裸足。
ここまでできる人が在野に眠ってたの?というかいままで何やってたんだ?と思いますね。
絵を見てるだけで退屈しない、ってのは確か。
これはすごい漫画家がでてきた!・・・・って言いたいところなんですけど、うーん、実に残念ながらお話がね、ちょっとありきたりかな、と。
核戦争後に汚染されて人外の変異種が住む旧日本、という舞台設定からしてよくあるパターンですし。
ましてやそこで主人公を助けるのが半人半獣の少女だった、というのがこれまたなんとも狙ってるなあ、って感じで。
機密文書を手に入れるために犯罪者が刻限を指定されて旧日本に送り込まれる、というプロットもニューヨーク1997(アメリカ映画)とほぼ同じですしね。
総じて、すべてが既視感強い、という。
あと逆輸入されたせいなのかもしれませんが、時々台詞回しが変。
口語でこんなセリフ吐かんだろ?ってのがたまにある。
そこは気を使って欲しかったですね、外国人が描いてるわけじゃないんだから。
この手のディストピアSFは好きなんですけどね、好きであるがゆえに粗が目についてしまった、ってなところでしょうか。
日本でもそこそこ人気がでてきてるみたいですが、更に突き抜けるためには定石崩していく必要がある気がします。
まあ、これでストーリーもすごかったら10年に1人の天才だと思うんで、そこはこれから精進してもらいましょう、と。
続巻での裏切りに期待したいですね。