香港/中国 2021
監督、脚本 ベニー・チャン

警察組織の官僚主義に絶望した元警官と、あくまでもルールの範囲内で正義を貫こうとする警官の激突を描いたアクション映画。
ベニー・チャン監督の遺作らしいですが、私は香港映画に詳しくない上、彼の作品は一本も見たことがないんでなんら語る言葉を持ちません。
本作を見た限りでは、ああ、ちゃんとしてるな、と。
いや、香港映画界は行き当たりばったりでなんの勉強もしてない人がメガホン握ったりするからさ、別にベニー・チャン監督自身に懐疑的なわけじゃないんですけどね。
アクションシーンのど派手さ、特にカーアクションのなんでもありな展開、見せ方はさすがベテランだな、とは思いましたし。
車同士が体当りするだけじゃないんですよ、車運転しながらドライバー(ドニー・イェン)が肉弾戦を演じたりしますから。
もう、人間業超えてるな、と思ったりもするんですけど、それこそが香港映画の醍醐味と言われればまさにその通りですし。
ただね、似たようなことを、すでにジョン・ウィック(2014)がやってる、と言われれば否定できないようにも思うんです。
ジョン・ウィックのチャド・スタエルスキ監督自身が香港アクションの薫陶をうけてますから、もちろんこっちが本家なんですけどね、たとえ傍流と言えどジョン・ウィックシリーズ、ハイブリッドな進化のスピードは本家をも凌駕せん勢いですし、認知度も高いですから、どうしたって既視感を感じてしまう場面はでてくる。
あ、これジョン・ウィックでもやってなかった?みたいな。
動作設計のアイディアがかぶるのは、きっとどうしようもないことなんでしょうけど。
そうなってくると期待は、ドニーの生身な格闘シーンに大きくかかってくるわけで。
いや、そりゃもう谷垣健治も関わってますしね、相変わらずのハイスピードでトリッキーなせめぎあいは一切文句なしの見応えのあるものでしたし、MMAの動きを取り入れてるのは目端が利くと感心したんですが、うーん、ちょっとね、編集の仕方がね、あんまり好きじゃないな、と。
あくまで私の好みなんですが、もう少し長回ししてくれんものか、と。
いささか余計なカット割りが多いような。
いや、これはどっちかというとカメラーワークの問題なのかな?
早回しのテンポもいつも以上にアップしてる気がする。
どこに境界線を設けるかは難しい判断だとは思うんですが、少しやりすぎなのでは、と。
なんかね、すごすぎて、CGなのか?これ?と思えてきちゃうんですよね。
シナリオがなんら新鮮味のない警察劇だったのも私の評価に水を指しました。
ダーティーハリー2(1973)かよ、って。
もう本当に香港映画はいつも似たようなプロットばかりで、今更どうこう言ったところでなんとかなるようなものでもないんでしょうけど、まるで共感できなくてですね。
総ずるなら、決して出来が悪いわけじゃないし、見応えもあるんだけど、なんとなく眼の前を通り過ぎていってしまって何も残らなかった、ってなところでしょうか。
ドニーの現代劇は、近作だとカンフー・ジャングル(2014)が一番良かったような気がしますね。
あれが集大成、で終わってほしくはないんですが・・・。
ドニーももう59歳ですしね、それを考えるなら驚異的、というべきなのかもしれませんけど。