サテリコン

イタリア/フランス 1970
監督 フェデリコ・フェリーニ
脚本 フェデリコ・フェリーニ、ベルナルディーノ・ザッポーニ

ペテロニウスの記した紀元前1世紀頃の文学「サテュリコン」をフェリーニが翻案、映画化した作品。

紀元前1世紀って・・・と、その時代の文学がまだ残ってること自体にも驚きですが、なんでそんなカビ臭いどころか原型すらとどめていなさそうなものをわざわざ映画化した?と不可解に思うんですが、そこは鬼才フェリーニ、我々凡人が考えもつかないような意図があったのかもしれません。

フェリーニのサテリコン日誌(1972)というドキュメンタリーが発表されてるので、おそらくそこであれこれ語ってるんでしょうけど、ソフト化されてないんで確認できず。

「紀元前のローマと現代の状況が似ているような気がしたので」と監督が語っているのを何処かで読んだ気がするんですが、現代と言われても1970年当時ですからね、もはや50年前の話ですから、どちらにせよなにもかもが遠い、って感じではあります。

一応、風刺劇と言われてますが、内容が断片的かつ散文的であり、意味不明のシーンがあるかと思えばお話が急に飛ぶんで、なにがどう風刺なのか初見ではさっぱりわかりません。

あーなんか頽廃的だね、生きるのに倦んでいる感じだね、というのは伝わってきますが、だからどうした、ってなもの。

なんせオープニングでいきなり男色家の痴話喧嘩ですから。

可愛い少年を巡って二人の男がギャーギャーもめるんですけど、そんなの知ったことか、勝手にしてくれ!とげんなりするばかりでね。

LGBTQの概念や医学的見地に基づいた理解抜きで、単に同性愛を退廃の象徴風に描写されても時代遅れと言うしかなく(紀元前ローマが舞台の古代劇だから!と言われれば口ごもるしかないですが)。

ま、それ以前に男同士の痴情沙汰とか見たくない、ってのもあるんですけど。

とかく戯画的、と言っていいかもしれない。

インモラルで醜悪でシュールで、なんだかずっとお祭り騒ぎで。

物語性は低いです。

おそらく、あえて物語を解体しようとしてるんでしょうけどね。

ですんで、ここから何かを汲み取るには、相当な努力が必要なんじゃないかと思います。

古い映画にお詳しい識者の方からすれば「お前は何もわかってない」と言われそうですが。

なにやら色使いの凄い絢爛なシーンが連続したり、見たこともないような造形のもの(紀元前ローマを反映した小道具かな)が出てきたりするんで、よくわからないなりにずっと見てられる、っていうのはあるんですが、じゃあそれが面白かったのか?と問われれば答えに窮するところですね。

この作品が傑作と言われてるのがどうにも・・・すごい時代もあったものだと。

21世紀ならプロットすら通らない、と思います。

甘い生活(1959)以降、私の理解を飛び越えてずっとあちら側 へ行ったっきりのフェリーニですが、晩年もこの調子なんでしょうかね、もう少し追ってみたいと思います。

とりあえず、興味ある人は覚悟して御覧ください、とだけ。

タイトルとURLをコピーしました