韓国 2021
監督、脚本 ユン・ジェグン
12時間毎に違う男の肉体に憑依を繰り返す主人公が、自分の肉体?に起こっていることの真相を求めて駆けずり回るSFアクション。
ちょっと説明が難しいんですが、簡単に言ってしまうなら東北のイタコみたいなもの、と考えるのがわかりやすいかと。
イタコの場合、依代として霊を自分の肉体におろすわけですが、本作のおける主人公はいうなれば霊そのもの。
イタコから呼ばれたら(いや、呼ばれてはいないんですけどね)どこの誰だか分かんなくても乗り移らなきゃならない。
ただし、幽界へは一切帰れないし、なぜか12時間毎の縛りがある、という設定。
一応、主人公、まだ死んではいない感じなんですけど、中盤ぐらいまで明確な判断はつきません。
突飛なアイディアと、どう転ぶのかわからない得体のしれなさがいやが上にもスリルを助長。
この手のネタって、これまでになかったわけじゃないとは思うんですが、ルールの設け方がうまいというべきなのか、主人公が憑依を繰り返すことで少しづつ事件の全体像が見えてくる仕掛けになってるのがなかなかに面白くて。
各登場人物から見た事実が、新たなピースとして事件の外堀を埋めていくんですよね。
そこに、どこかミステリの醍醐味を感じさせるものがあって。
他の人物に入れ替わる主人公を、主人公本人だと観客に認知させるための演出にいささか難がある(単純にわかりにくい)ようにも思いましたが、それでも途中までは決して悪くはなかった。
問題は終盤。
なぜ主人公はそのような状態に陥ったのか?の原因がなんとも適当かつ、いい加減で。
詳しくは書きませんけど、そんなことで憑依できる状態になるならオカルトも科学(医学)も今後必要なくなるわ!と私は思った。
そこで強烈に冷めちゃったんでね、最後の山場もなんだか他人事みたいに見えてきちゃって。
あー、わかりやすいラストバトルだね、うん、大変だったね、みたいな。
これはやっぱり詰めが甘いというべきなんでしょうね。
あと、どうせ憑依を繰り返すなら、なぜその頭数に女性を含めない、とも思った。
お話が脱線してしまいそうになるのを避けたのかもしれませんが、上手にやればコメディ調の楽しさをも包含することが出来たかもしれない。
それぐらいのユーモアはあっていいと思うんですよね、君の名は(2016)や転校生(1982)じゃないけれどもさ。
それと、アクションシーンの評価が高いみたいですが、私が見た限りじゃこりゃジョン・ウィック(2014)。
工夫がない、とは言いませんよ、韓国映画にしては水準高いと思ったけど、非常に似通ったことをやるのはやっぱりダメだと思うんです。
一連のカンフー映画みたいにジャンル化したいわけでもないと思うし、またジョン・ウィックをアクションのスタンダードとするのはいささか早計だと思いますし。
厳しすぎるかもしれませんが、流行りに便乗したようにも見えるんですよね。
なにやら後半で急速にしぼんだような印象を受ける一作。
もうひと踏ん張りしてほしかった、というのが正直な感想でしょうか。