中国/香港 2014
監督 テディ・チャン
脚本 ラウ・ホーリョン、マック・ティンシュー

なんせ孫文の義士団のテディ・チャンとドニー・イェンのタッグで、タイトルがカンフー・ジャングルですから、期待するな、という方が難しい。
結論から書いちゃいますと、ここまでの地位を築きあげておきながらいまだにトンデモ作品に出演することの多いドニーの、久しぶりな真っ当に映画らしい快作で溜飲下がる、といったところでしょうか。
ハリウッドっぽい撮りかただな、と思ったりはしたんですがやっぱりテディ・チャンはちゃんとしてる、と思いましたね。
映画作りに計画性があるし、ムラがない。
まあ、そんなところで感心してちゃあいけないんですけど。
シナリオ自体は単純です。
妻の死をきっかけに、武術界の達人をつけねらう連続殺人犯と化した謎の男と、それを阻止せんとする主人公ハーハウ・モウとの対決を描いたカンフー・アクション。
似たようなプロットは侠客時代劇としてジャッキーは言わずもがな、過去さんざんあったようにように思います。
そこに新鮮味はない。
ただ、それを現代劇として置き換え、サスペンス風の演出を施した手際はどこか気味悪さ、怖さもあって、マンネリズムの罠からは脱却しているように思えました。
前半私が少し気になったのはアクションシーンの撮り方で、なぜかドニーらしくない連続性を遮断するカメラワークだったこと。
テディ・チャンはそんなところまで欧米の影響を受けなくてもいいのに、と不安になったんですが、後から調べて見るとそれぞれの格闘シーンを担当した人間が違っていたようです。
何故かこの作品、過去香港カンフー映画にたずさわってきた人が大勢関わってるんですね。
香港映画に詳しい人にとっては懐かしい名前の人が何人かカメオ出演していたりするので、そこも見どころのひとつでしょう。
そしてなんといっても最大の見せ場はドニーがアクション監督を努めた最後の対決シーン。
ガンガン車や大型トラックが行き交う高速道路上での生身の対決は、とても50才を超えた人間がやってるとは思えぬ凄まじい攻防で、もう掌は汗でじっとり。
これ、一歩間違えたらどちらか死んでるのでは、とすら思える決死の撮影は、香港映画でしか、ドニー・イェンにしかできない孤高なものだ、と言い切っていいでしょう。
CGやワイヤーアクション頼りでこの質感は絶対に出せない、と確信。
このシーンだけで身銭を切る価値は充分にあります。
近頃傾倒していたMMAっぽい動きは封印して、あえて古くからのカンフーにこだわった作品ですが、それが懐古主義的に見えないのがこの作品の良さでしょうね。
ドラマ部分とのバランスもよく、個人的には捜査官X以来の秀作。
ドニーを知らない人に是非見てほしいですね。