ユー・アー・ノット・マイ・マザー

アイルランド 2021
監督、脚本 ケイト・ドーラン 

ある日突然姿をくらました母親が、数日して戻ってきたらまるで別人になってた、ってなイントロダクションのホラー。

いわゆる「外見は全く変わってないんだけど、性格、所作がまるで別の人になってた」というパターン。

もう、はっきり言ってしまいますけど、よくあるネタとしか言いようがなくてですね。

それこそ国内においては実録怪談から犬神憑きに至るまで、この手のお話は溢れかえってるし、欧米ならさしずめ悪魔憑きでエクソシストの仕事、アフリカや南米ならブードゥーの出番と言ったところか。

そういやグッドナイト・マミー(2014)なんて作品もありましたね。

グッドナイト・マミーのオカンの不気味さは余裕でこの作品以上だった気が。

ちなみに本作の場合はアイルランドの民間伝承がストーリーの核になってるみたいなんですけど、じゃあ誰が悪さをしてるの?って聞かれて、トロールって返事が帰ってきたりするあたりがね・・・。

トロール・・・って。

いや、北欧でね、トロールが森の精霊みたいな扱いをされてるのは知ってるつもりなんです、ある種、畏敬の対象にもなってるのは十分承知してる。

でもね、トロールと言われて、ああ恐ろしい、近づいてはいかんぞくわばらくわばら、ってなる日本人はほぼ居ないと思うんですよね。

だってトロールだもん。

RPGやファンタジーでお馴染みな、モグラみたいな生態の低知能のヒゲオヤジだもん。

本当に申し訳ないが「トロールにチェンジリングされた」とか言われても1ミリも怖くないわけですよ。

また、豹変したオカンの奇行が中途半端で。

もともとそういう人だった、と言われればそうなんですか?と納得してしまいそうな異常さしか演出できてない。

トロールならミミズを皿に大盛りにして「これぞミートスパ!」って言ってむさぼり食うぐらいのことはやれよ!と思うだけど、なんかちょっと心病んでる人レベルのことしかやらないんですよね。

結果、娘が変というから多分変なんだろうなあ、といった感慨しか抱けない。

で、トロールを追い払うには火で周囲を囲むしかないみたいなんですけど、それもねえ、そんなに簡単な儀式で済んじゃうならそもそも大騒ぎするまでもないじゃん、と思うわけで。

娘が上手に学校に馴染めずに苦労するシーンとかね、そんなに悪くなかったんで、多分これは適性の問題なんだろうなあ、と思いますね、監督の。

じっくり淡々とさりげない日常をフィルムに収めるのは得意みたいなんでね、ホラーじゃなくてその手の家族ドラマを撮ったほうがいいような気がしますね。

ホラーとしては定形で怖くないし、なにより地味。

私は娘がこの先、上手に友だちを作って、楽しい学園生活を送れるようになれるかどうか?の方がよっぽど気になりましたね。

ちなみに2023年8月中旬現在のロッテントマトのスコアは批評家88%、視聴者51%。

ま、そんなもんでしょ、批評家もたった77人しか見てないし。

ロッテントマトの数字をアピールする映画は9割9分信じちゃいかん、と思いますね。

余談ですがトロール題材ならアンドレ・ウーヴレダルのトロール・ハンター(2010)のほうがよっぽど面白かったですね。

興味のある方は是非。

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