2021 デンマーク
監督 マーチン・サントフリート
原作 ユッシ・エーズラ・オールスン
特捜部Qシリーズ第5弾。
前作を見て、もう続きは撮らないのかな・・と思ってた矢先に「過去最大の制作費をつぎ込んで完成」との報を聞き、大喜びしたファンは何を隠そうこの私でございます。
しかも監督は傑作ヒトラーの忘れもの(2015)をとったマーチン・サントフリートときた。
これで期待するな、って方が無理。
ついに制作側が本気出してきた、と思ったんですよ。
これまではテレビ映画っぽい質感もあったものだからさ、それを払拭する意味もあってのテコ入れだろうと。
こりゃ第6弾も期待できるぞ!なんて思ってたんですけど、いやーびっくりした。
マジで驚いた。
序盤15分で早くもおたおたしたよ、私は。
特捜部Qというと、おなじみカールとアサドが未解決事件に挑んでいく、というのがシリーズ通しての物語の骨子かと思うんですが、その肝心のカールとアサドがですね、全く知らない人なんですもん。
前知識がなかったもんで、見始めてしばらくは「いつになったらカールが登場してくるんだ?」などと少しいぶかしんだりもしてて。
そしたら薄らハゲのおっさんが劇中で「カール!」と呼ばれて、仰天。
カール!と呼んでるアサドも髭ヅラなだけの別人ときた。
まさか主要キャストを総入れ替えしてくるとは・・・。
いや、仕切り直しでキャスティングを見直す、ってのはよくあることだとは思うんですけどね、それにしたってこりゃあまりに大胆なイメージチェンジでむしろ改悪だろうと。
なんでカールがマフィアのボスみたいな悪人面の初老なんだよ、って。
どう見ても結構な年(役者の実年齢)なんですよ、新カール。
はっきりいって、孫に「おじいちゃ~ん」と呼ばれてても全く違和感なさそうな風体なのに、横紙破りな性格で上司に食ってかかるわ、禁煙に苦しんでるわ、カウンセリングうけろっていわれてるわで、これね、さすがにキャラクターと実像が乖離しすぎてるだろう、と。
やばいジジイとしか思えないわけですよ。
いい年してなんて落ち着かないんだ、お前は、みたいな。
禁煙ガム噛んでる様子を見てるだけでなんかイライラしてくるぐらいですから。
本来、伝わってこなきゃならないはずの「飽くなき正義への希求心」みたいなのが全く透けて見えてこない。
むしろこっそり汚職とかやってる側なんじゃねえのか、と。
アサドの適当な人選にもつくづく辟易。
中東っぽい見た目なら誰でもいいのかよ、って。
もちろんそんな二人の間に絆とか、信頼関係とか、嗅ぎ取れるはずもなくて。
二人の危うい関係性もこのシリーズの見どころだったはずなのに、ほとんど単なる職場仲間程度の演出しかなされてなくて。
そりゃね、4作目まで主演を努めたニコライ・リー・カースがベストな人選だとは言いませんよ。
だからといって10歳近く年上のウルリッヒ・トムセンはないだろう、と。
この配役をなぜ誰も止めなかったのか、ほんと不思議でならん。
どこからどう見たって違和感たっぷりじゃん。
しかもウルリッヒ・トムセン、歳のせいかアクションシーンで全く動けてないし。
事件そのものも、過去シリーズに比べたら、意外性に乏しいし、ショッキングでもないし、ある程度予測がつく凡庸さでして。
サスペンス仕立ての場面構成は悪くないんですけどね、事件の鍵を握るマルコとカールのギクシャクした関係が変化していくのを上手に描けてないもんだから、「知りすぎたマルコ」が今作の「裏の主役」として立脚してなくて。
むしろ資金援助団体のCEO、スナプの壊れっぷりの方が目立つ有様。
サブキャラの誰に焦点を当ててカールと絡ませていくかがぼんやりしてるんですよね。
というか、カール自身が全てから浮いてる、といったほうがいいのかもしれない。
不出来とまでは言いませんけど、キャストも含め、シリーズ中一番パッとしない仕上がりだったのではないか、と思いますね。
しかし、サントフリート招聘して、大金注ぎ込んでもこうなってしまうのか・・・と。
この作品を単独で見た場合の評価がどう転ぶのかはわかりませんが、過去作を見てる人にとっては相当キツイんじゃないかという気がします。
やらかしてくれたわ製作者、誰だか知らないけど。
あーこれは第6弾、もうないかもなー。
本国での興行収入が気になるところではありますね。