デンマーク/ドイツ 2015
監督、脚本 マーチン・サントフリート
第二次世界大戦終結後のデンマークにて、ナチスドイツが海岸線に埋めた地雷を除去するために拘束された、ドイツ軍少年兵達の悲劇を描いた戦後ドラマ。
こんなことが本当にあったのか、という驚きが私の場合、なによりも先行しましたね。
そりゃデンマークはドイツに占領されてましたから。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの心境で、ドイツ印のなにもかもが憎悪の対象になるのはわかる。
でもだからといってせいぜい10代後半が最年長と思しき少年たちに、数万にも及ぶ地雷を数ヶ月かけて撤去させるだなんて、あまりにも非人道すぎるだろう、と。
少年兵は地雷の撤去方法なんてそもそも知らないわけです。
ド素人が急場しのぎの教育をうけて、いきなり海岸に這いつくばらされ、1時間に6個というノルマつきで手探りに地雷をさがしていくんですね。
そんなの問題なく事が運ぶわきゃねえだろう、と思って見てたら案の定しくじるやつ続出で爆死に継ぐ爆死。
でも死の行軍はとまらない。
デンマークの軍部の人間は、彼ら少年兵に、戦下におけるドイツ軍の悪辣なふるまいを重ね合わせて見ちゃってるんですね。
いうなればこれは復讐。
少年兵が死んでもそれは報い、とばかりに高笑い。
ろくに食事も与えられず、罵倒され、蔑まれ、毎日命のやり取りを強いる現場に彼らは送り込まれ続ける。
なんかもう序盤のストーリーを追ってるだけで私は泣けてきましたね。
可哀想過ぎて。
だってね、戦争をおっぱじめたのはアイコンとしてのヒトラーであり、直属である軍部のオッサン連中であって、末端で銃を握らされた彼らはいうなれば使用人みたいなもんですよ。
なんにもわかっちゃいないですよ、10代の小僧なんて。
勲章つけたドイツ軍のオッサン連中に地雷撤去させる、ってんならまだわかります。
それなら因果応報だ、と納得できなくもない。
けど、それが無理だから使用人に八つ当たり、って、立派な大人のやることじゃないですよね。
でもデンマーク軍人の暴走は止まらない。
デンマークの民間人ですら、少年兵達を見ていい気味だ、とあざ笑う。
戦争がもたらす遺恨、復讐の連鎖って、なんて根深く、人を醜く変えてしまうのだろう、と私はなんとも暗澹たる気持ちになりましたね。
また少年たちが、そんな悪夢のような状況下にありながら、故郷に帰ったら母さんの得意料理を食べたい、とか、商会を立ち上げて仕事をするんだ、とかささやかな夢をお互いに語りあったりするんですよ。
本当に解放されるかどうかもわからないのに。
もう涙腺決壊です。
久々に映画見てて、神も仏もないものか、と憤りで鼻血が出そうになった。
物語が大きく動き出すのは後半。
ある事件をきっかけに、少年兵を監督してる軍曹の心に「彼らはドイツ人である以前に、まだほんの幼い少年達なのではないか」という気づきが芽生えるんですね。
そこからのドラマはまさに怒涛。
板挟みになった軍曹の葛藤と、少年たちとの関係性を描いた一進一退の展開は見るものを捉えてはなさない迫真性があった、とだけ言っておきましょう。
そして絶望の果てに一筋の光明を照らす感動のラストシーン。
もう断言しますけどね、これを名画と呼ばずしてなにを名画と呼ぶのか、と。
醜く怒りで歪んでしまった心を脱ぎ捨ててやることで「人間性の回復」を謳った傑作だと思います。
弛緩と緊張を自在に操る作劇、予断、予測を許さぬ間合いのとり方も見事。
とても新人監督の仕事とは思えない。
心打たれました、こりゃ必見でしょう。