ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

2021 アメリカ
監督、脚本 ジェームス・ガン

ジェームズ・ガン監督の手によるリブートというか仕切り直し的なDCコミックの人気作、再映画化。

ま、前作があの体たらくでしたんで。

前作の寸評でも書きましたけど、ハーレイ・クインのお披露目以上の意味を持ち合わせてない、ってのが私の総括で。

そもそもお前誰やねん、としか言いようがなかったキャラ揃いの凡作を、名手ジェームス・ガンが仕切り直す、ってんだからそりゃ期待しないほうがおかしい。

もう、結論から書いちゃいますけど、雲泥の差と言っていいレベルで本作、圧倒的に面白いです。

使ってる駒はそれほど変わってないのに、この差配の見事さは何事なのか、と。

高い特殊能力や、秀でた身体能力を持つが、基本、あんまり頭が良くないんでやることなすこと行き当たりばったりでデタラメ、でもおかしな主義主張に囚われることなく、モラルや正義感度外視で実力行使に徹すればそれなりにうまくいったりするよね、としたお気楽なノリを持ち込んだことがまずは大正解ですね。

ポップな犯罪映画のような小気味よさがあるんです。

もっと悲壮感があっていいはずなのに、それを隠し持ちつつも常に笑いが上回るコメディセンスも流石の一言。

特に私が感心したのはキャラクターの肉付けのうまさですね。

ハーレイ・クイン以外はほとんど知名度がないにも関わらず(アメコミ好きな人はわかるんでしょうけど)物語を追うだけで犯罪者共がどういう人間なのか、自然とわかってくるんですよ。

つまりはそれが、この即席チームで仕事をこなすことの危うさ、スリルにつながってくる。

もうほんとにデヴィッド・エアーはジェームス・ガンの爪の垢でも煎じて飲め、と。

シナリオの構成も隙きなし。

全滅する確率の方が高い特攻作戦の理不尽さ、やりきれなさがが、あれよあれよと言う間に終盤における悪党たちのなけなしの義、ヒロイズムへと化けちゃうんだから、ほんとこの人はみんなが何を見たいと思ってるのか、わかってるな、と。

時にはグロく、ブラックな描写でもって人が簡単にバンバン死んじゃうのもいい。

人の命がやたら軽いんですよね。

アメコミ映画なのにおかしなリアリズムがあるんですよ、戦争だから、そりゃ人は死ぬよね、みたいな。

あれ、これはひょっとして予定調和で終わらないのか?主要キャラですら途中で死んじゃうのか?といった変な緊張感が全編を支配していたりする。

こういうことをユーモアに織り交ぜることができる監督って、ほんと居ないと思うんです。

ハーレイ・クインをいかにも紅一点らしく、溝泥にまみれていてさえスタイリッシュに美しく撮ろうとしている点も素晴らしい。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒(2020)のキャシー・ヤンはこの映像見て少しは勉強しろ、って話だ。

文句なし、ですね。

私はスーサイド・スクワッドって、こういう楽しみ方をする物語だったのか、とよくやくわかったほど。

しかし、この出来で前作には到底及ばぬ興行収入しか計上してない、ってのがにわかに信じられないですね。

いかにコロナ禍で不利な状況にあったといえ、もっと客入ってもいいだろ、とほんと思う。

5年程度しか経過してないのに仕切り直しに踏み切った、ってのも不利に働いたか。

考えられるのは新鮮味に欠けたことぐらいだと思うんですが、ハーレイ・クインを凡作で使いまわしすぎた、ってのもあったかもしれません。

どうあれ、後世に残るのは、間違いなくこちらの作品だと思うんで、ファンのみならずとも見る価値はあると私は思いますね。

安定のジェームス・ガン、面目躍如の一作。


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