2021 アメリカ
製作、監督、原案 フィル・ティペット
荒廃した未来の地下世界を描くストップモーションアニメ。
企画自体は90年代に始動していたらしいんですが、CG隆盛のあおりを受け頓挫、近年になって協力者が現れ30年越しにようやく完成にこぎつけたのだとか。
内容を、至極簡単に一言で言っちゃうならグロいサイバーパンクですね。
ストーリーはあってなきようなもの。
なんせセリフがほぼないんで。
サイレント映画でも見てる感覚で接するしかない。
ま、豊かな想像力がなくとも見てりゃあだいたいわかる感じには仕上げられてますけど。
さしずめ、どこかインダストリアルな地獄めぐり(なんだそれ)を微に入り細に入りねちねち描写、といったところか。
知ってる人はBLAME!(弐瓶勉)を想像してもらったらちょうどいいかもしれない。
BLAME!よりずっと薄汚くて醜怪ですけどね。
特殊効果の神様と呼ばれたフィル・ティペットが、ある日突然時代遅れになってしまった絶望感と、病気に苦しむ自身の内面を反映させた一作だと言ってますんで、楽しくポップな感じになるはずもなくて。
ただ、そんな気味悪さも、私の場合、どことなく懐かしい感覚を呼び覚ますことが多かったりもして。
スチュアート・ゴードンのドールズ(1986)と言う古い映画をふいに思い出したり。
あの時代の手作り感満載なホラー映画の空気を孕んでるんですよね。
不気味なのは間違いないんですけどね、不気味さより、数十年ぶりに故郷で旧友と再会したようなノスタルジアにどっぷり浸ってしまったり。
この感覚は80年代のSF/ホラーをリアルタイムで通過してきた人しかわからないでしょうね、きっと。
わけのわからんことを書いてるのは自覚しております。
この映画を見て郷愁って、サイコパスなのか?って話ですし。
監督はフリッツ・ラングやF・W・ムルナウ等のドイツ表現主義に強い影響を受けた、と言ってますんでメトロポリス(1926)とか、あの辺りからの影響に思慮をめぐらすべきなのかもしれないですけどね。
どっちかというと表現主義というより中2なのでは・・・と思ったりもしますがそりゃまあいいか。
見ごたえがあったのは、終盤、ペストマスクの男が登場してきてから。
まさかあの展開から世界を創出するとは思わなかった。
デタラメなりにイマジネーションが奔放なんで、あ、こういうの好きだわ、と直感的に思ったりしました。
ディストピアだったり終末世界だったりをモチーフにしたアニメが好きな人とかにささる一作かもしれません。
作ってる本人はじじいだけど、意外と若い人にもアピールする内容なのでは、と思いましたね。