死霊館 悪魔のせいなら、無罪

2021 アメリカ
監督 マイケル・チャベス
脚本 デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック

死霊館ユニバースの7作目であり、エド&ロレインのウォーレン夫妻が調査した実際の事件を映画化した第3弾。

しかし、知らぬ間に7作も作ってたのか、死霊館。

アナベル(2014)なんかもきっとカウントされてるんでしょうけど、思ってた以上に根強い人気があるんだなあ、と少し驚きましたね。

ワイルド・スピードシリーズに追いつかんばかりの勢いじゃん。

おそらく、互いの客層は全くかぶってないんでしょうけどね。

「車」と「心霊」は、一度ツボにはまればかほどに強い、ということか。

えっ、ひょっとして根は同じなのか?

わからんけど。

ま、正直なところ、私自身はそれほど熱心にこのシリーズへ入れ込んでるわけでもないんですけど、ウォーレン夫妻を主人公にしたナンバリングだけはなんだか気に入ってまして。

現在よりも心霊そのものがずっとミステリアスで多くの人の注目を浴びていた時代、その正当性を知らしめんとする主人公夫婦の孤独な戦いと二人の強い絆の作劇がね、なんかホラーの枠組みを超えて胸を打つなあ、と思うことが何度かあって。

今の尺度で測るなら「そりゃねえわ」と思うこともあるんですけど、最初に未踏の大陸を目指した冒険家のことを否定するほど私は擦れてなくて。

先人が誤解や偏見と戦い続けたからこそ、オカルトは死なずに生き残ったわけですから。

信じる信じないは別の話として、なにもかもが科学や一般常識で解き明かされてしまう世界ほどつまらんものはないと思うわけで。

で、今回のウォーレン夫妻ですが、二人が命がけで対峙するのは「呪い」。

ポスターには「悪魔」って書かれてますけど、大きく間違いではないにせよ、厳密に言うなら日本で言うところの陰陽師あたりが仕掛けてきそうな「呪術」がテーマとなってます。

呪いのせいで殺人を犯してしまった少年の無実を証明しようと夫妻は奔走するわけだ。

いやしかしこれ、今回はすごいところに駒を進めてきたな、と。

法廷などという超現実主義な立法の場で、立証の方法すら見当もつかない不可視な超常現象を認めさせようというのだから、こりゃまさに科学VSオカルトのガチ勝負と言っても過言ではない。

なんといってもサブタイトルがいいですよね。

「悪魔のせいなら、無罪」ですもん。

もう、このタイトルだけで絶対見よう、と私は思ったほど。

きっとすげえロジックが裁判において展開されるんだろうなあ、と。

マジで悪魔を信じてしまったらどうしよう・・・などとドキドキしてたりもしたんですけど、えーと、結論から言ってしまうと、その手のシーソーゲームな法廷闘争や喧々諤々な熱い弁舌はほとんど描写されてませんでした。

なんとなく顛末を報告しておしまい、みたいな。

そういう意味では肩透かし気味だったことを否定できません。

けどまあ、それは私の一方的な先入観が招いた落胆ですし。

法廷云々を抜きにするならね、オカルトミステリとしての質は高かった、と思います。

中盤ぐらいまで、何が起こってるのか全くわからないんですよね。

一方的に翻弄されるウォーレン夫妻の危なっかしい活躍にぐいぐい引き込まれていくのは間違いないですし、事件の渦中において、二人の揺るがぬ慈しみ合いの精神に変わらず心揺さぶられたことは確か。

終盤に軽いどんでん返しが待ち受けてるのもいい。

前2作に比べて、どこかスペクタクルな絵作りがあったのも好ポイント。

やるじゃねえか、マイケル・チャベス、と。

ラ・ヨローナ~泣く女(2019)は平均的な仕上がりだったのになあ。

頭抜けてシリーズ最高傑作、というわけではないですけど、ウォーレン夫妻のファンなら納得の一作じゃないでしょうか。

実話ベースなのが良い方向へ働いた好例だと思います。

本シリーズ、自分の中でどんどん特捜部Qみたいな扱いになりつつあったりはするんですが、この調子で連作を重ねてほしいなあ、と思える秀作でしたね。

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