アメリカ 1968
監督 ロマン・ポランスキー
原作 アイラ・レヴィン
私がこれまで見たホラー映画の中で、1、2を争う怖さだったのが実は本作。
とはいえ多くのホラーファンが期待するような、スプラッターな血しぶきや異形の存在、禍々しさ満載の忌まわしい絵がショッキングにちりばめられているわけではありません。
むしろ作品自体は地味に淡々とマタニティブルーな主人公、ローズマリーの不安定な精神状態や、行動をじっくり描写していきます。
すべては妊婦の妄想なのか、それとも現実なのか。
どちらともとれる不穏なシークエンスの積み重ねはまさにポランスキーの独壇場。
私が震え上がったのは奇妙な安堵感すら漂わせる静謐なエンディング。
肝心の赤ちゃんは一切写さぬまま、ベビーベッドを見つめるローズマリーの姿は、母性とは実は本能のなせる思い込みの産物なのかもしれぬ、と我々に教唆します。
恐怖とはなんなのか。
実は一番恐ろしいのは無自覚な狂気ではないのか。
その本質を数分で見せつけたラストシーン、必見です。
クリストファーコメダの担当する音楽も神経を逆なでする美しさと気味悪さがあって、素晴らしいです。
ホラーに名を残す名画でしょう。
いまだこの作品を大きく上回る恐怖に私は出会っていません。
コメント
[…] ローズマリーの赤ちゃん […]
[…] とても名作ローズマリーの赤ちゃんを撮った人の映画だとは思えません。 […]
[…] 別に幽霊もクリーチャーも出てこないんですけどね、このなすすべのなさには「ローズマリーの赤ちゃん」とか、あの手のホラーをふいに思い出したりもしましたね。 […]