1982年初出 小池一夫/池上遼一
スタジオシップ道草文庫 全8巻
有名人のポルノフィルムを秘密裏に流通させることで巨額の利益を得る組織GPXに恋人を奪われた主人公、白髪鬼バラキの壮大な復讐を描いた物語。
裏テーマになっているのは、どう愛を貫くのか、みたいな哲学なんですが、なんと言いますかどうにもマッチョイズム薫るなあ、と。
そもそもこの作品におけるセックスって、結構微妙なポジションにあると私は思うんです。
強制されたセックスフィルムを拒否することでバラキは恋人を失ってるわけですから。
それって貞操観念なわけですよね。
ところがその肝心のバラキ本人が、セックスを武器に強引に女を口説き落とすような行為を作中では何度も繰り返してるんですね。
意地悪な言い方をするなら女性の人格そのものがひどく安い扱いなんです。
手前勝手な復讐につき合わせていくたびも犠牲を出しながら、それを永遠の愛などと言われてもですね、私なんかは過去に残された累々たる屍の数に、どうにも共感ない感情の方が先にたつ。
徒手空拳の男が巨大組織に挑む姿にカタルシスはあるんですが、もしこの愛と呼ばれるもののセックス描写がある種の読者サービスなのだったとしたら、これは過剰だし、言ってることとやってることがちぐはぐだろうと。
OVA化もされた人気作ですが、私はあんまり好きになれません。
やはり小池一夫は時代劇、なんて当時は思ったものです。
コメント
[…] 簡単にまとめてしまうなら、小池一夫お得意の手口、それこそ傷追い人ぐらいから(I・餓男から、と言ってもいいかも)連綿と続くパターンの踏襲、といってほぼ間違いないでしょう。 […]