1989年初出 望月峯太郎
講談社ヤンマガKC 全4巻
作者の趣味が前面に出た作品。
テーマになってるのは1950年代のロックンロールとその文化ですけど、軽佻浮薄な80年代にエルヴィスとかリーゼントとか言われてもなかなか振り返ってくれる読者は居なかったんじゃないか?という気がしますね。
なんせ掲載誌はヤンマガ、読んでるのは若い人がほとんどだったでしょうし。
私も含め、当時はみんなが「なにか新しいもの」を欲してた気がします。
そこは100歩譲っても温故知新じゃない。
バブル崩壊後ならまた受け止められ方も違ったかと思うんですが、実験的過ぎる内容ゆえ、そこは容易に判断がつかない部分もありますね。
だってね、バイク人間とか登場してくるんですよ。
字面そのまま、人間がそのままバイクに変貌しちゃうんです。
ヘッドライトの部分が頭部にあたるみたいで、顔だけ人間で体はバイクなどという奇天烈な描写があったりする。
人面バイクって、なんなんだよ、って話で。
しかもなぜそうなるのか、一切の説明はなし。
全部ロックンロールのマジックで片付けられちゃう。
50年代に青春を過ごした人ならまた違った印象を受けるのかもしれませんが、ケツの青い若造にこの世界観を理解しろ、という方が無理。
いや、私のことなんですけどね。
野心的で毒をも併せ持ったクレイジーなファンタジーだなあ、とは思うんですが、これを面白いと思える感覚は私の中にはないですね。
コメディだけじゃなくて、なにか他にも隠し持ってるな、と唸らされはしたんですが、いささか自由にやりすぎたようにも感じますね。