1980年初出 石川賢
徳間書店アニメージュコミックス
あらぬ疑いから五体をバラバラにされ、無人惑星に生きたまま放置された男の復讐を描いたスペースオペラ。
もうオープニングからものすごいインパクトです。
巨大な水槽みたいなのに電極でつながれた男の首が、かっ、と目を見開きながらぷかぷか浮いてるシーンから物語は幕を開けるんですね。
周りには無残に惨殺された家族の死体。
主人公は動かぬ手足を水槽の中から見つめながら、来る日も来る日も復讐の事だけを考え続ける。
この残酷さ、忌まわしさはまさに永井豪の系譜。
どんな展開が待ち受けてるんだ、と手に汗握るわけですが、 実は本作、復讐譚としてはそれほど劇的ではなく、むしろ、どうやって主人公、虎は首だけの状態から脱することが出来たのかに焦点が当てられ、予想外なスケールでストーリーは変転するんですね。
一言で言うなら本気で宇宙SF。
なんだこれ、どこへ行こうというのだ、と初読時はとても驚かされました。
あれだけ強烈な幕開けが終盤においては単なるプロローグ扱いになっちゃってるのにもびっくり。
つまりは恩讐を超えた向こう側を石川賢は描こうとしている、ということ。
特筆すべきは想像力をかきたてる圧倒的画力、デザイン性でしょうね。
宇宙空間に半透明の巨大な赤子らしきものが浮遊してたりするんですよ。
これは間違いなく永井豪にはない発想。
残念ながらこれから、というところで終わっちゃってるんですが、この世界観はのちに虚無戦記シリーズとしてまとめられます。
余談ですが、私の読んだ徳間書店版より、後に加筆修正されたものがオススメ。
一連の石川宇宙SFの一角を担う一作。
コメント
[…] 物語のプロットが作者の5000光年の虎に酷似しているのもマイナス要素。 […]