アメリカ 2023
監督 M・ナイト・シャマラン
原作 ポール・トレンブレイ
ああっ、シャマランが原作つきの映画を撮ってる!と驚いたんですけど、調べてみたら前作オールド(2021)もそうだった。
・・・・そうだったのか、感想の内容が変わってくるがな(今更遅い)。
確かシャマランはシックス・センスの成功で、自分のシナリオをゴリ押しする権利だかなんだか(ごめん、忘れた)を手に入れたはずですが、もう期限切れなのかな?
低迷期には自宅を抵当に入れて作品の制作費を捻出したそうだから、自分の脚本がどうのこうの言ってる場合じゃないのかもね。
で、今作ですが、原作があるとは思えぬほどシャマランらしい作品です。
いきなり4人組が主人公たちの自宅にやってきて「あんたら家族の内ひとり死んでくれ、そしたら世界は救われる」とのたまいやがるんですよ。
どう考えても絶対に近寄ってはいけない人の言質なんですけど、このありえなさというか、突拍子のなさこそが実に彼らしい、というか。
だからねー、あんたはほんといつも唐突すぎるのよ、段階を踏んでじっくり描く、ないしは世界観、物語の背景を語らぬまでも自然に悟れるように構築する、ってできないの?とつい、オネエ口調で説教してしまいそうになるほどに。
それぐらいいきなり。
もう、頼んでもいないウーバーイーツが朝イチに鬼気迫る形相でピンポン連打して「金払えや!コラ!」って怒鳴ってるレベル。
いやいやのれないですよ、流石にね。
「世界の終末」ってネタそのものがもはやラノベですら笑われてる有様ですしね。
なんで2023年に終末なんだよ、って。
現実に温暖化が進行しているがゆえに、かえってその大仰さにリアリティがない。
しかも世界の終末の根拠とおぼしき事由がヨハネの黙示録ときた。
なんで手垢に手垢を塗り重ねたような題材をわざわざチョイスして今映画化するかな、とマジで思いますね。
ネタだけでいえばほぼ80年代前夜ですよ。
こんなの真面目に受け止めるのは熱心なキリスト教徒だけなんじゃねえか、とすら思う。
私なんざ最後の最後まで黙示録ネタから逸脱してくれるはず、と信じ込んでたぐらいだから。
そりゃね、ベテラン監督ですからそれなりに見せてはくれます。
デイブ・バウティスタの予想外に細やかな演技も作品の底上げに貢献してると思う。
どんでん返しを期待される監督、というレッテルを逆手に取って観客をミスリードしたいやらしさも評価していいのかもしれない。
でもやっぱり圧倒的に「古臭い」。
なんだかおじさんが「まだまだ俺もいけるだろ?」って、若作りして悦に入ってるんだけど、どう見ても年寄りの冷や水でしかない状態と言うか。
決してやれなくはないんだけど、やっぱりこの人、どこかズレてるわ、って感じで。
発表するのが25年ほど遅かったように思いますね。
せめて1990年代ならまだ通用した。
ま、時代遅れって意味ではスプリット(2017)もそうでしたけどね。
眼の前で次々人が自死していく怖さとか、狂気漂ってて嫌いじゃないんですけど、もうスリラーにこだわるのはやめたほうがいいような気がしますね、シャマラン。
映画はスリラーだけじゃないんだし。
とりあえず、とってつけたような多様性に配慮してる場合じゃねえだろ、と。
彼の映画を見るのはこれで最後かもなあ、と少し思ったりしましたね。