2020 ノルウェー
監督 アンドレ・ウーヴレダル
脚本 アンドレ・ウーヴレダル、ノーマン・ルスペランス、ジェフ・ブセティル
北欧神話をベースに、あるきっかけから人を超えた能力を得た男の命運を描くSFファンタジー。
なんとも真っ当なヒロイックファンタジーです。
アンドレ・ウーヴレダル監督というと私の場合、ジェーン・ドゥの解剖(2016)のイメージが強いんで「こんな映画も撮れるんだ!」という驚きが少なからずありましたね。
ぶっちゃけシナリオや作劇に、さしたる新鮮味はありません。
ま、意図せず超常能力を得てしまったら、こんなふうになっちゃうだろうな・・と普通に想像できてしまう範疇で、主人公もサブキャラもなすすべなくウロウロしてる。
マイティ・ソー(2011)なんて映画もあったことですしね。
私はちゃんと見てないんですけど、確かあの映画も雷神トールをモデルにしてたはず。
しかし、世界を席巻するMCUと似たようなネタで今、改めて勝負かけるか?!とは思いますね。
口さがない人達は絶対「これ、マイティ・ソーじゃん!」って言ってると思うんですよね。
逐一チェックしたわけじゃないですけど。
ただ、この作品が北欧神話本家本元のノルウェーによる、雷神トールの扱いに対する回答だとするならまた見方も変わってくる、と思うんです。
マイティ・ソー バトルロイヤル(2017)とか、話を聞くところによるとコメディ色が強かったらしいですし。
自国の神話を好き勝手アレンジ、あまつさえ笑いに走るとか、そんな身勝手な創作姿勢を快く思わない北欧の人達が居たって全然不思議じゃない。
そのあたりは何もアナウンスされてないんで真意は計りかねるんですけど。
でもつい勘ぐってしまいたくなるほど本作は、小手先の派手さに頼らずしっかりとドラマを構築してたりするんで。
どう考えてもモブキャラだとしか思えない脇役の背景をもきちんとすくい上げて物語の重要な骨子としてるし、主要な登場人物の戸惑いや、逡巡も紋切り調に片付けてしまわず、じっくり描かれてる。
まさかこう展開するとは・・・みたいな、心地よい裏切りはないですし、既視感は拭えないんですけど、とても丁寧に作られてることが退屈さを感じさせない、というか。
なんだかもう連続ドラマシリーズがこれから開幕するのか?ってレベルで細やかなんですね。
実際、ラストシーンは続編への意欲満々、いやむしろ続編作るつもりなんでしょ?これ?ってな終わり方でしたし。
ノルウェーの田舎町の寒々しくも美しい風景と、超常現象が発現するシーンのコントラストも素晴らしかった。
あんまりこの手の映画で、ナチュラルなカットが美しいと感じることってないんじゃないか?と思うんです。
大人の観客の鑑賞眼に耐えうるヒロイック・ファンタジーだと思いますね。
二番煎じと言ってしまえばそれまでですけど、私は続編が発表されたら間違いなく見ますね。
救いがなさすすぎて打ちのめされそうな予感もするんですが、もし化けるとするならMOTAL2ではないか?と考えてたりします。
余談ですがアンドレ・ウーヴレダルはもうハリウッドで映画撮らないんでしょうかね?
スケアリーストーリーズ(2019)であまりに自由度がなさすぎて懲りたか。
いや、詳しい内情は知らないんですけどね。