アメリカ 2016
監督 アンドレ・ウーヴレダル
脚本 イアン・ゴールドバーグ、リチャード・ナイン
ある民家の地下から掘り出された身元不明の遺体が巻き起こす怪異を描いたホラー。
主人公が検死官である父親と、助手である息子、舞台が地下にある遺体解剖室、という設定はなかなか目新しかったように思います。
ホラーでこの手の密室劇、ってあんまりないような気がしますね。
一見、普通の遺体に見えるんだけど、死因を特定するための解剖を進めていく内に、いくつもの異常が見つかるミステリアスな展開もいい。
いわく、死後硬直がない。
両手両足の関節が粉々に砕かれている。
外傷がないのに内臓に無数の傷がついている、などなど。
医学的見地から謎を解き明かそうと二人の医師はあらゆる可能性を検討するんですが、そのプロセスがね、どこか本格ミステリのようでもあり、見ていてやたらおもしろいんですよね。
ホラーだから、って虚仮威しに執心してないんです。
至極論理的に、何がどうおかしくて、普通じゃないのかを前半ではじりじりと煮詰めていく。
それが最終的には恐怖につながる仕掛けなんですよね。
個人的に白眉だ、と思ったのは中盤の「あるシーン」。
これには震え上がった。
こんなの常識で解き明かせる世界じゃないじゃねえかよ!という絶望を見事可視化してる、と思いましたね。
後半は前半に比べるなら割とオーソドックスなパターン。
こういう風に怖がらせるしかないのはわからなくもないんですが、前半の「何が起こるのか皆目見当のつかない怖さ」に比べるとややありきたりかも。
残念だったのはエンディング。
ちょっと煙に巻かれちゃったかな、と。
散りばめられた謎をすっきりさせることより、どうオトすのか、に頓着しすぎた感じも。
若干尻の座りが悪い印象も残ります。
ただまあ、全編通して「死体は死体のままである」としたアプローチは見事だった、と思いますね。
誰もがやりそうなことはやらないよ、としたこだわりを私はそこに感じた。
うん、嫌いじゃないですね。
傑作、ってわけじゃないですけど、志は高い一作だと思います。
将来性を買いたい、ってところでしょうか。