2021 ノルウェー/デンマーク/スウェーデン/フィンランド
監督、脚本 エスキル・フォクト
人あらざる力に目覚めた子どもたちが、その力を持て余して?暴走してしまうお話。
いわゆる非接触テレパスだったり念動力だったりが、団地の子供たち数人に突然発現してしまう、という内容なんですが、ま、サイキックスリラーというよりは非現実仕立ての心理ドラマ、って感じですね。
焦点が当てられているのは、決して豊かで恵まれているとは言えない子どもたちの内面。
移民で被虐待児だったり、顔に目立つ痣があったり、姉が自閉症だったり。
満たされぬ思いを常に抱えた子どもたちが力を持ってしまったらどうなるのか?をじっくりと嫌らしく描いているのが本作、と言えるでしょう。
そもそもが子供って残酷ですから。
手に余る力を手に入れてしまったら、まずろくなことにならないのは自明の理で。
よくあるプロットといってしまえばそれまで。
この手のテーマを掘り下げた作品は過去にもたくさんありましたしね、例えば蝿の王(1963)とか。
過去の類似作には見られなかったなにかがあるわけではないんで、ギリギリ退屈はしないかな、ぐらいの按配ではあるんですが、注目すべきは大友克洋の童夢(1980)への憧憬が半端ない点でしょうね。
いやこれ童夢そのままやん!ってな場面やシチュエーションが次から次へと出てきてあたしゃ笑ってしまった。
監督本人が童夢にインスピレーションを得た、と公言してますし、もう40年近く前の漫画ですしね、まあ、いいかとは思うんですけど、それにしても北欧の映画監督にまで影響を与えていたとはすごいな大友。
そこまで広く世界に伝播しているとは思わなんだ。
童夢との違いは、童夢が刑事ものっぽい側面があったの対し、本作はすべてが団地内で完結してしまう点でしょうかね。
警察や大人の介入はほぼなくて。
サイキックならではの派手なアクションも一切なし。
そこははっきり言って漫画よりも地味。
スキャナーズ(1981)みたいなのを期待すると大きく肩透かしをくらいます。
子供たちの揺れる幼い心模様を丁寧に拾おうとするのは北欧ならではかもしれません。
最後の対決に挑むのが、あの人、というのがどこか暗示めいていいですね。
童夢との違いはそこぐらいかな。
さて童夢を読んだことのない人がこの映画を見てどう感じるのか全く予想がつかないんですが、私の印象としては、こじんまりと、特定のファンが付きそうな気はしますね。
童夢を通過してる人にとっては微笑ましい一作、と映ることでしょう。
ぼくのエリ(2008)ほどのインパクトはないかな。
いや、どっちかというと同じ北欧で同傾向の作品だと思うんで。
ちなみに本編でジャケットのようなシーンはありません。