カナダ 1981
監督、脚本 デヴィッド・クローネンバーグ

クローネンバーグが撮った割にはやけにエンターティメントしててわかりやすい作品。
スキャナーズと呼ばれる超能力者同士の、立場の違いによるいさかいを描いたSFなんですが、アメコミとは一線を画すものの、かといってキャリー(1976)やフューリー(1978)のように日常に根ざしたドラマがあるわけではありません。
プロットはどちらかといえば単純。
それなりにドロドロした人間関係があったりはするんですが、肝心の主人公の背景が終盤まで全く見えてこないことと、警備会社がスキャナーズに深くかかわる、という設定がどこかリアルさに欠けるのが難点かと。
いやね、意志の力で他人を自由にする能力者、となればそりゃもう国家の出番だろう、と私は思うんですね。
普通に考えて民間に自由にさせておいてよい素材じゃない。
結局、当時の水準にしては見事なSFXが衆目を集めたんだろうなあ、と思うわけです。
念じて頭部爆発、血管浮き上がって念動合戦の鬼気迫る描写はここを起点にあらゆるメディアにおいてひとつのパターンになったように思います。
もう数え切れないぐらい多くの作品が、超能力者、といえばこのセオリーを踏襲しているように思う。
そういう意味ではサイキックものに「型」を提示した作品、と言えるかもしれません。
クローネンバーグのカタログの中ではおそらく一番間口が広いであろう作品かと思うんですが、ブルート(1979)やビデオドローム(1982)に怖気立った身としては幾分物足りなさを感じたりもしますね。
いや、インパクトは充分なんですけど。
一番屈折してない作品がこれかな、と思えること自体がすでに狂ってる、という話であったりはしますが。
コメント
[…] 魔法の発現もどこかスキャナーズを思い出させる派手さがあって良。 […]