2022 韓国
監督、脚本 パク・イウン
邦題につられて、ついこの作品に手を出した映画ファンが相当数いたであろうことは想像に難くない。
いや、まあ私のことなんですけどね。
だってブルドーザー少女だよ?
ブルドーザー✕少女だから。
完全に対極にあるものが並列に並んじゃってるんだから。
こりゃもう間違いなくバカ映画だろうと。
最近で言うならマッド・ハイジ(2022)系の。
非力で貧乏な少女がリベンジホラーさながらに、悪辣なオッサン共をブルドーザーでぺしゃんこにしちゃうんだろうなあ、多分シナリオはあってなきようなもので、とにかくカタルシス第一の物語設計に違いない、うんうんわかってますよ、楽しませてくれよ、ってなものですよ。
大きな期待はしないけど、酷く落胆することもあるまい、とタカをくくってた。
そしたらですよ。
ブルドーザー少女(原題The Girl on a Bulldozer)のくせに、やけにシリアスでクソ真面目だったりしやがるんですな、これが。
ろくでなしの親父(ギャンブル狂)のせいで住む場所を追われた少女とその弟が、実は父親は街の権力者にはめられていたという隠された真相を知るまでの過程を、前半1時間ぐらい費やして切々と描いてたりするんですね。
なんだこの社会派サスペンスは、と。
誰がブルドーザー少女に韓国の貧困問題や汚職問題を照らしてくれって頼んだよ!って話で。
また主人公の少女がねー、あんまり頭がよくなくて。
決定的な証拠をスマホに記録したにもかかわらず、肝心の証拠をなんの防護策もないまま権力者の前で振り回して取り巻きにスマホを奪われてしまう始末。
やりようによっちゃあ合法で弁護士立てて対決する芽も残ってたというのに、一時の感情に振り回されて大騒ぎしてさらに自分を追い込んでしまってる状態で。
高校生ぐらいの年齢だとこんなもんなのかなあ、どちらにせよキレて解決する問題じゃない、ってことぐらいわかれ!とだんだんイライラしてくるんですよね。
ていうか、誰も少女を諌めないし、味方もいない状況で徒手空拳なんで、悲惨さが先に立つといったほうがいいかもしれない。
ありていに言うなら暗い。
なんでこんなに暗くて救いのない話を延々2時間近く見なきゃならんの、ブルドーザー少女なのにぃ、と気が滅入ってくる。
ま、一応最後にはね、当初予想した通り少女はブルドーザーに乗って突貫しますよ、悪人たちの元へとね。
けどそれも決してスカッとするような顛末を招くものではなくて。
ヤケクソなだけやん、笑えんぞこれ、ってな感じ。
うーん、どうなんでしょうね、私が悪いのかもしれないですけどタイトル詐欺なんじゃねえのか、といった気もしなくはなく。
で、最大の問題点は、邦題がどうであれ先入観抜きで見てもさほど出来が良いとは思えない点。
驚くべきことにこれ、実話ベースの映画らしいんですが、結局なにを描きたかったのかよくわからない、というのがまずあって。
見たままを解釈するなら「生まれてきてからこれまであなたは運が悪かったけど、20歳超えてやっと運がめぐってきたね、良かったね」ってな風にしか捉えられない。
運命論者の寝言を映像化したかったわけじゃないでしょ?って。
結局金持ってるやつが正義で、少女はバカだったからこんなことになった、以上、なんです。
どこにもカタルシスがないし、訴えかけてくるものもない。
映画作品としてはちゃんとしてるんだけど、残念ながらノンフィクションゆえの空洞化が顕著な一作でしたね。
とりあえずバカ映画ファンは惑わされないように。
もう全然違うから、バカ映画をかすりもしてないですから。
あーなんか疲れたわ、あたしゃ。