アステロイド・シティ

2023 アメリカ
監督、脚本 ウェス・アンダーソン

アメリカ南西部の町で1955年に開催された科学賞受賞イベントの様子を描いた妙なコメディ。

まあ、アンダーソンらしいというか、これ以上ないぐらいアンダーソンというか。

作品の煽り文句を考えた人は珍しく正しいな、と思ったり。

うーん、グランド・ブダペスト・ホテル(2013)を見てついに殻を破った!と感心し、犬ヶ島(2018)を見てこの人のアニメは本業のアニメ監督ですら嫉妬するのでは!と驚いた私だったんですが、なんかね、今回は昔に戻っちゃったような気がしますね。

ニッチで屈折したオフビートな笑いを得意とするカルト監督的な。

ま、カルトってほどではないかもしれないけど、ライフ・アクアティック(2005)ぐらいまで遡ってるような気がしますね、私は。

それが悪いってわけじゃあないんですけど(他に誰もこんな映画撮ってる人いないし)、やっぱりね、この手のやり口って、どうしたってマイナーというかアングラなイメージがつきまとう気がするんですよね。

多分「これこれ」って感じで好きな人は猛烈に好きなんでしょうけど、わかる人にしかわからないボケが明確なオチを伴わずに放置気味だったり、コメディの体をなしていない文脈がコメディ然とのさばってたりするんで、結局のところ感覚的に共感するしか噛み砕くすべがなくてですね。

これは間違いなくみんな笑う、ってなわかりやすいテンプレート不在なもんだから。

でね、そういうのはもういいと思うんですよ、私は。

アンダーソンが、これぐらいのことは余裕でやるのをもうみんなわかってると思うし、それが彼の独自性でもあるし、そんなのはファンも十分承知してるはず。

変わらず期待を裏切らないことが送り手、受け手双方にとって心地よいのはわかるんだけど、さすがにそれもキャリア20年超えとなるとね、マンネリとかワンパターンとか言われだしたりもしちゃうわけだよ。

ましてや「別のことができそうな」風なのに、わざわざ回帰的って、どういうことなんだ、と。

老け込むにはまだ早かろう、と。

まるでアニメのような背景美術だったり、実は劇中劇だったりするシナリオの複雑さだったり、「マーズ・アタックかよ!」と思わずツッコみそうになる宇宙人のナンセンスな見てくれや所作だったりと、見どころは色々あるんですけどね、それを踏まえた上であえて私は言いたい「さらにワンクラス上を」と。

何かが上手に噛み合えば、アンダーソンはスピルバーグになれると思うんですよ。

買いかぶり過ぎ、って言われちゃうかもしれないですけどね。

なんだか私にはこの作品、同じところで足踏みしてるような印象を受けましたね。

とりあえず常連組と呼ばれるキャストを一掃するところから始めては、と思う次第。

うーん、歯がゆいですね。

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