2022 アメリカ
監督 ウィリアム・ブレント・ベル
脚本 デヴィッド・コッゲシャル
衝撃のオチが話題となったエスター(2009)の前日譚。
ほんとにアメリカ人は前日譚好きだよなあ、と思うんですけど、日本人がそれほど前日譚に興味持ってないのは今も変わってないでしょうし、国内だと一部の人間しかこの作品のことを気にかけてないような気がしたりも。
ま、知らない人に「見て!見て!」と進めるには門戸が狭すぎるでしょうね。
なにより、前作があのオチですから。
あのオチが観客にわかってる状態でアナザーストーリーを練り上げるなんて、相当な難事業だと思うんですよ。
びっくり箱の中身がわかっているのに、箱の機能性や性質について改めて語られたところで更に面白くなる、ましてや衝撃度が増すはずもないんですから。
怖さを追求する方向性からは逸れるほかないだろうと。
人間ドラマ風の異形のサスペンスにするしかないだろうな、と思ってたらその通りでしたし。
そういう意味では大きな裏切りや意外性は全く無い。
普通にサイコパス野郎(女郎?)の凶行劇に終始してますしね。
せめてエスターの異形である哀しみに着目していてくれてたらクローネンバーグやデル・トロの名作にも迫ることができたか、と思わなくはないんですが、内面を掘り下げたりとか、全く無かったですしねえ。
最初から怪物だもんなあ。
エスターをアイコン化したかったのかもしれませんけどね。
けど、それは多分無理な話で。
というのも、エスターを演じるイザベル・ファーマンが現実にどんどん年を取っていくからで。
ここから前作のネタバレを含みますんで敏感な人は読み進めないように。
やっぱりね、いくら童顔だからといって26歳が9歳を演じるのは流石に無理がありますよ。
作中では遠近法と代役を駆使して身長を低く見せかけたらしいんですが、それ以前にもうルックスがどう贔屓目に見ても9歳じゃないから、って話で。
制作陣はCGを使わずに乗り切った、と語ってましたが、いや、使ってくれよ、と。
イザベルのアップとか、皺は映ってるわ、肌は荒れてるわで(年齢相応におきれいなんですが、子供の肌ではないと言う意味)。
大人の女性が子供の格好をしている風にしか見えない。
どんな性癖のフェチなんだよ、と。
もうね、一番気を使わないといけない箇所だったと思うんですよ、いかにイザベルを9歳に見せるか、って部分は。
そこを役者任せにしてるんだもんなあ。
結果、子供の格好をするのが日常なおかしな女を、自分たちの娘扱いする狂った家族の物語になっちゃってるんですよね。
それはそれでホラーなのかもしれないけど、監督が意図する演出とは違う形でみんな気味悪いと思ってるはずで(違うのか?)。
ネタ映画じゃないんだから。
あえて明度をおとした映像でなんとかごまかそうとしてますけど、無理だから、それ。
プロットは悪くないんだけど、キャラクターの作り込みが極端すぎるのも難点。
特にエスターの母親役、あんなに狡猾で嫌らしい二面性を併せ持つ女なんてほぼ居ないと思うんですよ。
エスター以上にサイコパスだったりしますから。
息子も含めてサイコパスが渋滞しちゃってますからね。
監督であるウィリアム・ブレント・ベルの出世作、ザ・ボーイ人形少年の館(2016)は面白かったんですけどね、やっぱりあれはシナリオの力による偶発だったか、と思い直した次第。
なんだかもうそっとしといたほうがいいかな、って感じです。
とりあえず、再度エスター役をひきうけたイザベル・ファーマンは勇気あったな、と思いましたけどね、皮肉じゃなしに。