アメリカ/カナダ/アイルランド 2021
監督、脚本 デヴィッド・ロウリー
かの有名なアーサー王の甥、サー・ガヴェインを主役に据えた14世紀の叙事詩を翻案して映画化。
で、ですね、私、知ったふうなこと書いてますけど、サー・ガヴェインはおろか、アーサー王に関してすらあんまり明るくないわけだ。
特に晩年とか、全く知らないと言っていい。
不勉強ですまん。
えっ、アーサー王すら知らねえの?と言われれば返す言葉もない(円卓の騎士の物語ですら忘れかけてる状態なので)。
でもねー、他所の国の王様のこととか、あんまり興味持てないわけですよ、ぶっちゃけた話。
なので「その甥」となるとあまりに遠すぎて、もう架空のキャラクターにも近いわけでして。
ラノベ読者の間では有名らしいですけどね、サー・ガヴェイン(なぜ?)。
だから序盤から終盤にかけて、とにかくキャラクターの人間性というか、特徴みたいなものがよく見えてこない。
アーサー王の甥であることが彼に何を強いていて、何を苦悩しているのか、全然わからなくてね。
これは作品が不親切なのではなく、一方的に私が無学であることに起因してる問題だと思う。
南米の少数民族の数代前の村長の息子の話を聞いてるわけじゃないんだし。
さすがにこれぐらいは基礎教養なのでは、という恥じらいは私も持ち合わせているわけで。
ですんでね、この先書くことはそんな薄らバカな人間の戯言に近くなると思うんですが、それでもいいという方だけ読み進めていただくとして。
とりあえず思ったのは、サー・ガヴェイン、なんかモラトリアムだな、と。
特にやりたいことも見いだせなくて毎日酒浸りで、お前は受験で燃え尽きた日本の大学生かよ、と。
そんなガヴェインが、突然城に現れた緑の騎士(ほとんど妖怪みたいな存在)に難癖つけられて「1年後に俺の一太刀を浴びろ」と無理やり約束させられてしまう。
もうね、この時点でよくわからんわけですよ。
お前誰やねん、知らんがな、で済む話を、騎士の宿命みたいな感じで背負わされてしまうんですね。
一体、なんの呪いなんだよ、という。
そして1年後、ガヴェインの冒険の旅が始まるんですが、途中で進撃の巨人みたいなのに遭遇したり、変な騎士にもてなされたりと紆余曲折。
なにかと暗示的で、思わせぶりな展開、台詞回しが多いんですが、それが何を意味してるのか、圧倒的に知識が不足してるので思いを巡らせることすらできない。
で、エンディングですよ。
ああ、これは寓話だったのか、と腑に落ちる。
ある種の成長物語だったんだな、と。
しかしながらすべてがあまりにも対岸の火事で。
なんか色々含むものがありそうだけど、手触りはおろかその実像すらおぼろげで焦点を結ばない。
うーん、だめだ、私にはこの映画、よくわからん。
独特な視点、切り口のファンタジーで、美しい映像に目をひかれはするが、伝わってくるものがあまりにも抽象的すぎる。
ま、通過儀礼だったんだろうな、と考えるのが楽ちんでいい感じですが、反面、それを130分もかけてやるのはどうなんだ?と思ったりもする。
デヴィッド・ロウリーらしい映画だとは思いますね。
こんなのA24でしかやれないと思う。
見る人を選ぶ作品だと思いますが、サー・ガヴェインに詳しい方がご覧になれば、色々と興味深い点も見いだせるんじゃないでしょうかね。