2021 アメリカ
監督 アンディ・サーキス
脚本 ケリー・マーセル
スパイダーマンに登場する人気ヴィラン、ヴェノムを主役に据えたスピンオフ、第二弾。
前作ヴェノムの興行収入が全世界で940億円を超えたらしいですから、もはやスピンオフどころか主柱の一本なのかもしれませんけど、ここまで人気沸騰しちゃうと本家スパイダーマンとすら絡ませにくくなっちゃうのでは、と思ったり。
ま、そこはきっとそれなりにやるんでしょうけどね、なんたってマルチバースだから(しかし、凄い方向性に舵を切ってきたな、とつくづく思う)。
やっぱり冴えないジャーナリスト、エディと寄生生物ヴェノムをバディもの風に仕上げたのがうまかった、ってことなんでしょうね。
それは本作においても遺憾なく発揮されていて。
お互いがお互いに振り回され続けるドタバタ劇は、マーベル云々を抜きにして見ても楽しい、と思いますし。
ブラックといえばブラックなんですが「人、食わせろ!」とヒスを起こすヴェノムの暴れっぷりとか、良質なホラーコメディを地で行く危ないユーモアがあって。
いいよ、食ってこい、と気軽に許可できないエディのジレンマがわかり易すぎてつい笑ってしまう。
で、これがそのまま最後まで黒いギャグ路線だったら良かったんですけど、問題は「ヴィランだけど、結果的には善い行いをさせねばならない」と勧善懲悪なアクション路線に舵を切った部分に工夫のなさが見受けられる点があること、でして。
確実にヒットを飛ばすためにはそうせざるをえないのはわかるんですけどね、もう少し敵のキャラクター、なんとかならなかったのかと正直思いますね。
乱暴に言っちゃうなら、前作と大差ないんですよね、これだと。
どうしても「また身内でドタバタやってやがんのか」って印象を抱いてしまう。
端から見てる分には迷惑極まりないわけですよ、カーネイジだか新種だか知らねえけど。
全部自分たちが巻いた種じゃん、と。
巻き込まれる側(この場合、街の人達になるのかな)したらたまったもんじゃない。
それをアンチヒーローがごとく、事件を未然に防いだ感たっぷりに正義の味方ヅラされてもですね、それ以前に「きっちり管理しろ!」って話であって。
コメディなら許されることも、深刻さを深めていく演出が介在しちゃったりするとこっちも笑ってられなくなってくるわけで。
スパイダーマンだけでもあれほど豊富なヴィランが存在するんだから、使い回しでもいいから他の敵を用意できなかったものかと思いますね。
戦闘時おけるヴェノムの能力値や適性を解析していく上でも(多分、そうした方が次作の糧になる)全く違う属性の敵をあてたほうがワクワクできたように思うんですが、なんで今回も自分VS自分みたいなことやってるんだろう、と。
ネタに詰まった時のプロットですよ、こんなの。
それでも大ヒットしたんだから結果オーライ、ってことなんでしょうけどね。
でもこういうことを続けてると、今後展開するスパイダーマン・ユニヴァースにヴェノムが合流したときに、軽い扱いにしたくはなかったが、なんか軽くなっちゃった、ってな状況に陥りそうな気が私はするんですけどね(だって現状、お笑い二人羽織以上の掘り下げがないから)どうなんでしょうかね。
長らくアメコミ映画の天下が続いてますけど、そろそろ下降線をたどるのかもしれない、という予兆を抱かせた一作。
何も考えずに見る分には楽しいんですけどね。