フランス/ベルギー 2021
監督、脚本 ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ
世界各地の廃墟や心霊スポットを紹介して人気を博すYOUTUBERカップルが、いわくつきの水中屋敷に潜入してとんでもない目にあうホラー。
「湖底に沈んでしまったが、瓦解することなく存在している洋館に忍び込む」というシチュエーションはなかなか目新しかったように思います。
なにかに挟まれて水中から脱出できなくなり、ボンベの残量あとわずか!さあどうする!みたいなパニックスリラーは山ほどありますが、いわゆる幽霊屋敷をまるごと水の中に沈めてしまうという発想はこれまでなかった気がしますね。
必然、タイムリットが生じてきますし、水中であることの不自由さも足かせとなるわけで、こりゃおもしろくなりそう!とホラーファンに期待を抱かせるだけの舞台作りだったのは間違いない。
ところがね、そうは期待通り物語が進んでくれなくて。
残念だったのは、せっかく水中にわざわざ屋敷を沈めたのに、屋敷の中で起こった出来事が、陸上のそれと大差なかったこと。
別にこれなら普通に幽霊屋敷ものとして地上で撮ればいいじゃん、ってなレベルの仕掛け(恐怖演出)しかないんですよ。
水中ならではの恐怖にあんまり気配りされてない。
どうせならいきなりボンベの空気が血に変わるとか(幻覚でいいからさ)、突然マスクを剥ぎ取られるとか、呼吸不可な閉塞感の演出にこだわってほしかった。
時間制限のもたらす焦燥感も希薄。
「もう、酸素なくなるよ?!」って段になって慌てられてもね。
こういうのは「計画的にやってたはずなのに、何故か酸素がない!」って状況に追いやられてこそ緊迫感も増す、というもので。
怪異の原因であろうと考えられる屋敷に秘められた謎も、ありきたりというか、ありがちというか。
これまた水中であるがゆえの特性を活かしきれてない。
~ような事情があったからこそ、この屋敷はまるごと湖底に沈められたのだってな種明かしがあってこそ「そんなところにわざわざボンベしょってやってくるこの主人公2人組はほんとバカ!ああもうバカバカ!」って見てる側も盛り上がるわけでね。
85分という上映時間も災いしてたのかもしれませんが(ま、モーリー&バスティロはいつも短いけど)もう少し弛緩があっても良かったかな、と思ったりしました。
結構、一本道なんですよね。
あれよあれよと展開していく小気味よさはあるんですが、ホラーは「間」も大事だと思うんで。
うーん、なんか低調。
前作、呪術召喚/カンディシャ(2020)のほうがまだインパクトあったかな。
エンディングのビターな感じというか、救われなさはモーリー&バスティロらしいと思いましたけどね。